抄録
文字に色を感じる色字共感覚が知られている.本研究では比較研究として,非共感覚者を対象に,文字から連想する色と出現頻度の関連性について検討を行った.具体的には,評定者にひらがなを呈示し,各文字に対して連想する色を選択してもらい,選択した色の色相・明度・彩度と文字の出現頻度の相関について分析した.実験には大学生男女70名が参加し,各評定者は呈示された文字から連想する色について,色空間の中から1点の選択を行った.選択された色の特徴量(色相・明度・彩度)を算出して,文字の出現頻度との関連性を検討した.その結果,文字の出現頻度において,色相と彩度には明確な関連性が見られなかったが,明度との間に弱い関連性があることが明らかとなった.先行研究では,共感覚者が文字から感じる色において,その出現頻度と明度・彩度との間に関連性があることが示されているが,本研究の結果より,文字の出現頻度と色特徴における関連性は,共感覚者に限らず見られる連合に基づいたものであることを示唆している.