抄録
展望的記憶課題の成績は、課題が複雑になると低下すると考えられる。しかし、課題を理解しているが適切な時機に遂行できないゴールネグレクトの研究(Duncan et al, 2008)では、課題遂行時の処理負荷が増えても遂行すべき課題間に競合が起きても、ゴールネグレクトの生起に影響はなかった。そして教示の時に形成される課題モデルが複雑になるとゴールネグレクトが生起しやすくなった。以上のことが展望的記憶課題でいえるのかを調べるために実験を行った。結果、教示によって生じる、課題の知識の複雑さ、課題モデルの複雑さが高い条件の方が、低い条件よりも展望気的記憶課題の成績が低かった。一方、背景課題の正答率と反応時間は教示による差はなかった。実際には不必要なものであっても課題情報が増えることで相対的に当該のターゲットアイテムと目標行動との関連が弱まり、展望的記憶反応に失敗すると考えられる。