抄録
本研究では,感情刺激に対する視覚的注意の特性を特に復帰抑制に注目して検討した。実験では手がかりとして快・不快刺激を画面の左右いずれかの領域に提示し,その後に手がかりと同じ位置あるいは異なる位置のいずれかに標的を提示した。実験参加者には,標的が提示されたらできるだけ早くボタンを押す検出課題を行うよう求めた。手がかりと標的のSOA(Stimulus Onset Asynchrony, SOA)は800msであった。手がかり提示位置と標的提示位置が一致する条件を有効条件,両者の提示位置が一致しない条件を無効条件として,それぞれの条件の平均反応時間を求めて分析した。その結果,無効条件の反応時間が有効条件に比べて短くなる復帰抑制の効果は,快刺激を手がかりとして提示した場合には不快刺激を提示した場合よりも短くなった。