抄録
曖昧な図形では個々の特徴がばらばらな状態から特徴同士に関係がついて意味のわかる知覚状態へ突然転移することが知られているが,意味を生み出す脳内過程がどのように進行するのかは未解明である.本研究ではこうした曖昧刺激の能動的な知覚過程を取り出すため,生物や物体の写真を白と黒で二値化した画像を被験者に呈示し,意味が分かった時点でボタン押しを求め脳波を解析した.また二値画像刺激のみを呈示し続ける場合と,間にマスク刺激を挿み交互に呈示する場合とで比較を行った.その結果,ボタン押しの3秒前からマスク刺激呈示期間のみに頭頂葉にアルファ波が増加することが観測された.一方でマスク刺激を挿むか否かによらず,持続的なシータ波の増加がみられた.これらの知見は,脳内では視覚刺激のない期間にも情報を保持して意味構築が進められること,またその過程には視覚刺激がある場合と異なる機構が関与している可能性を示唆する.