抄録
ストループ課題は、認知心理学的にも,また,前頭葉の検査として神経心理学
的にも興味深い。被験者は,書かれた文字とその色とが異なる条件では,反応
時間の延長,誤反応の増加など葛藤を感じる。この葛藤状態を直接的にニュー
ラルネットワークモデルとして表現した。具体的には,入力層として3種類を
仮定した。すなわち,文字知覚層,色知覚層,及び課題識別層である。これに
出力層を加えた4つの処理モジュールを結合してモデルを構成した。それぞれ
のモジュールでは個別の勝者占有回路によって読みの候補が候補選択され,最
終的に出力層での勝者占有回路によって読みが決まる。文字と書かれた色が異
なる条件では,文字優位効果が存在するが,この効果を課題識別層の初期値と
して実装した。読みに至るまでの反応時間とエラー率とが説明できるモデルで
ある。