抄録
ニュースとして報道された社会的できごとの経過時間の評価を求めると(「何年前に起きたか?」),一般的には実際よりもやや最近に起きたと推定されやすい(テレスコープ錯誤)。また若年者と比べて,高齢者では実際よりもやや昔に起きたと推定する傾向が認められる(反テレスコープ錯誤)。本報告では,高校生から高齢者までを対象に経過時間評価に関する調査を行い,その生涯発達的パターンについて探索的に検討を行ったところ,年齢が増すほど反テレスコープの錯誤が強まる傾向が確認された。これに加えて「熟慮した上で判断を下すかどうか」という認知的傾向(概念的テンポ)と経過時間評価との間にも関係が認められ,とくに50歳代において熟慮傾向者ほど反テレスコープの錯誤が強まるパターンが確認された。以上の結果を踏まえて,時間的参照枠と生涯発達・加齢との関係性について考察を行う。