抄録
認知症ドライバーによる危険運転が問題視されている.ドライビング・シミュレータ(DS) による高齢者の運転能力査定が可能となれば, 実走行試験よりも安全性に優れ, かつペーパーテストよりも妥当性の高い方法として有用である.そこで, DSによる認知症ドライバーの運転能力査定の可能性を検討する一環として, 健常者を対象とした予備実験を行った.認知機能健常の高齢ドライバーがDS環境に慣れるまでに要する練習量を確認することを目的とした実験に, 若年ドライバー13名と認知症の兆候がないことが確認された高齢ドライバー8名が参加した.高齢群は若年群よりもDS課題において低い成績を示すが, 試行を繰り返すことによって若年群並みの成績を達成することが確認された.DSを用いた認知症ドライバーの査定に際しては, 認知機能健常の高齢者であっても, DSに慣れるまでに若年者より多くの練習量を必要とすることについて, 配慮すべきである.