近年の統計学習(statistical learning)に関する研究により,視覚刺激の呈示順序の規則性が,顕在的に意識されることなく学習されることが明らかになっている(e.g., Brady & Oliva, 2008)。しかし,このような視覚刺激の統計学習における記憶が,学習時における刺激呈示順序の統計的規則性に基づいて保持されるのか,あるいは,学習時における刺激の呈示順序にとらわれない意味情報のまとまりとして保持されるのかについては明らかになっていない。そこで本研究ではテストフェイズにおける刺激の呈示順序を操作し,この点について検討を行った。実験は学習フェイズとテストフェイズから構成され,テストフェイズでは学習フェイズで呈示された刺激について二肢強制選択課題(familiarity test)が要求された。その結果,テストフェイズにおいて,刺激が学習フェイズとは異なる順序で呈示された場合においても,視覚的統計学習が成立することが示された。