抄録
身の回りにある物や空間の表面や壁面のテクスチャは,人に様々な質感の印象を与えるとともに,物や空間の大きさやスケール感に関わる認知的な処理も含まれると考えられる.またその過程においては,テクスチャの色彩が具体的な対象を顕在的あるいは潜在的に連想させる要因となっている可能性がある.本研究では,テクスチャ画像における色彩の有無がその画像から受けるスケール感にどのような影響を及ぼすのか調べた.実験では,GoogleMapやGoogleEarthから一定の縮尺となるように様々な地点の衛星画像を選定し,実験参加者に1枚ずつフルカラーまたはグレースケールで提示し,特定の長さがどのくらいに感じたか評価させた.その結果,グレースケール画像はフルカラー画像に比べてより小さく判断され,またそのばらつきは大きくなる傾向にあった.また,その傾向は,用いた画像のうち,衛星画像とわかりにくい場合に顕著であった.