我々は他者から多くの影響を受けている.事物に対する選好判断では,人の視線が向けられた対象がそうでない対象よりも好まれることが知られている.本研究では,視線を向ける人の「数」が日用物品に対する選好判断に及ぼす影響を検討した.実験では,4人の顔写真とターゲット(日用物品)が対呈示され,ターゲットに視線を向ける人数が操作された(4人,2人,1人).その結果,視線を向ける人の数が選好に影響することが確認され,4人から視線を向けられたターゲットがより好まれた.また,視線を向ける人が全て同じ人物(同じ顔写真)の場合には,このような効果は見られなかった.これらより選好判断におよぼす人数の効果は,知覚される視線量の違いによるターゲットへの注意の程度の差を反映しているものではなく,ターゲットに関心を示す人物の多寡という人数情報が,知覚者自身の選好判断に利用された結果であると考えられる.