抄録
負のプライミング効果 (NP)の最も代表的な原因説は当該刺激への抑制が一時的に持続するとする抑制説 (Tipper, 1985)だが,証拠としてのRSI (response-stimulus interval)に伴うNPの減衰を確認する実験結果が一貫しなかったため確証が得られていなかった。Neil, Valdes, Terry, & Gorfein (1992)は実験結果が一貫しなかったのは実験配置の違いのためで,ブロック間配置ではNPは減衰しないとして抑制説を否定し,PRSI (previous RSI)とRSIの相対的大きさが影響するとするエピソード記憶検索説を提起した。しかしConway (1999)が指摘するようにNeilらのブロック間配置ではRSIとPRSIが常に等しかったことに加え抑制説が影響を仮定している時間的不測性が低いため,エピソード記憶検索説の確証が得られたとは言えなかった。そこで本研究では,通常のブロック内配置でNPだけでなく時間的不測性の指標である単純反応時間を測定し,両者の関係を調べた。その結果,ブロック内配置では時間的不測性がPRSI-RSIの組み合わせによって異なることと,時間的不測性がNPと負の相関をすることが見出され,抑制説の支持的証拠が得られた。