抄録
錯視を利用する文字装飾の一種に、陰影の手がかりをもとにして実輪郭を持たない文字(影文字)を立体的に知覚させる方法がある。本研究は、影文字の陰影および背景の配色と、文字としての「見やすさ感」や影文字独自の「目立ち感」および「立体感」の印象との関係に着目した。PCCS表色系を配色に利用して種々の色の組み合わせの影文字を作成し、印象強度に影響を及ぼす要因を検討した。印象評定実験の結果、影文字の背景と陰影においてPCCS色相環上での一定以上の色相差あるいはトーン差のある組み合わせで印象強度が増加する傾向が示された。次に、呈示した影文字の背景色と陰影色を測色し、明度差、彩度差、色相差、さらにこれら3要素による色の総合的な相異である色差を算出して評定結果と呈示刺激の関係を分析し、評定値の高低に影響を与えた要因について考察した。