抄録
成人が文章を読む際,意味理解には黙読が,逐語記憶には音読が有利であることが知られている。これに対し,高橋(2007)はガーデンパス文の意味理解を行わせ,黙読の場合は二重課題を設けることで成績が低下するのに対し,音読では成績が維持されることを見いだし,音読は個々の単語に強制的に注意を配分する読み方であるため,二重課題状況下では意味理解においても音読が有利となったと考察している。本研究では,この音読の注意配分機能を文章理解において検討した。二重課題として音高聴取を行わせながら,音読と黙読の2条件で文章を読ませた後,理解と記憶のテストを行った。読み返しなどの読み方略の影響を統制するため,読み時間に制限を設けた。その結果,理解テストでは音読よりも黙読の方が,記憶テストでは黙読よりも音読の方が,成績が高くなる傾向が得られた。この結果から,音読の注意配分機能は単語に注意を向ける課題に対して有効であることが示された。