抄録
素人は,量刑判断をするとき,犯罪が重大であるほど被告人に重い刑罰を与えるという方略をとる。本研究は,その方略が潜在的なレベルでもはたらいているという仮説を,潜在連合テスト(IAT)を用いて検証した。実験では,参加者を次の2群に分け,映像を見せる前後で2回IATを行った。一方の群には,量刑判断の判断材料として,残酷な犯罪の報道映像を見せた。別の群には,スポーツ映像を見せた。実験の結果,犯罪映像を見せた群では,重さの均衡がとれた犯罪概念と刑罰概念の組み合わせ(例.強盗殺人と無期懲役)が,不均衡な組み合わせ(例.駐車違反と無期懲役)に比べ,映像後に強まることが示された。一方,スポーツ映像を見せた群では,そのような変化は見られなかった。量刑判断の判断材料の呈示によって犯罪と刑罰の均衡性が強まるというIATの結果から,犯罪が重大であるほど重い刑罰を与えるという方略が潜在的であるとする本研究の仮説は支持された。