本研究では検索経験パラダイムにおける抑制処理への競合項目数の影響を検討した。検索経験パラダイムではターゲット項目(Rp+)を検索することで,ターゲットと共有する競合項目(Rp-)の検索が統制条件(Nrp)と比べて困難となる現象が観察される。この現象は競合項目が抑制されることにより生起すると考えられている。本研究の目的は抑制と検索が処理資源を共有しているかを検討することであった。検索に要する処理資源を操作するため,手がかりあたりの学習項目数が2項目群と10項目群の2条件を設定した。実験の結果,Rp-の再認反応時間がNrp, Rp+より遅く抑制が観察された。また,2項目群の方が10項目群より反応時間が速かった。加えて,2項目群と10項目群の間に抑制効果量の差は認められなかった。これらのことから抑制は検索に要する処理資源から独立している可能性が指摘できる。