想起された自動車走行の速度推定に及ぼす2種類のバイアスの影響を実験により検討した。
59名の女子大学生が実験に参加した。数台の自動車が走行する動画を観察させた後、小冊子を使用して質問に回答させた。従属変数はターゲット車の走行速度の推定値である。質問文でターゲット車の走行の様子を記述する言語表現を2種類用意して語法の要因とし、ターゲット車の速度推定の直前に高低いずれかのアンカー速度と比較判断させた。
参加者の運転免許の有無(2)×アンカー速度(2)×質問の語法(2)の3要因被験者間計画の分散分析の結果、アンカー速度の主効果が顕著に有意であり、また3要因交互作用も有意であった。運転免許の有無にかかわらず、速度推定は直前の比較対象であったアンカー速度に大きく引きずられ、アンカリング効果が確認された。また、質問の語法は、運転免許無し群の低アンカー条件における速度推定にのみ影響を及ぼしていた。