日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第12回大会
選択された号の論文の156件中1~50を表示しています
口頭発表1-1 英語セッション(記憶,思考・言語)
  • A Near-Infrared Spectroscopy Study
    Victor Alberto Palacios, Hirofumi Saito, Misato Oi, Shuang Meng, Ryoma ...
    セッションID: O1-1-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    In the present study we examined the neural correlates for incidental learning of three kinds of memory: outer speech (reading aloud), action (gesturing), and inner speech (silent reading). We hypothesized that action-based memory would have a stronger memory trace than speech- and silent reading-based memories because action seems to facilitate memory and we hypothesize that these memories will each activate distinct areas of the brain such as the left middle and superior temporal regions. Participants accurately distinguished between performing an action for each sentence and accurately perceived when a new sentence was presented. However, participants did not accurately distinguish between inner and outer speech (i.e., reading aloud and reading silently). The result suggests that the memory traces for action are stronger than other kinds of memories, and this implication will be confirmed by NIRS data analysis.
  • 山田 千晴, 板口 典弘, 福澤 一吉
    セッションID: O1-1-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    同じ文字をできるだけ速く繰り返し書き続けると、意図した文字とは異なる文字が出現する。このエラーは書字スリップとして知られている(仁平, 1984; 1990)。従来の研究では、スリップを誘発しやすい文字についての報告はあるものの、その文字とスリップの結果出現する文字との関係は検討されてこなかった。本研究では、文字間の関係を運動学的類似度と形態類似度の観点から検討した。運動学的類似度は運動軌道と運動速度の類似度を表す指標である。形態類似度は、質問紙の結果から定義された。実験の結果、「あ-お」間でのスリップが最も多く生起した。「あ」と「お」は、非常に高い形態類似度をもつ文字ペアである一方、運動学的類似度は軌道と速度の両方について低かった。この結果は、文字間の運動学的類似度よりも、形態類似度の方が書字スリップの生起に大きく寄与することを示唆した。
  • Kwangoh Yi
    セッションID: O1-1-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    To evaluate the effectiveness of the existing lexical decision tasks including the conventional one, three different definitions of word were inserted in the instructions for the experiment. Participants had to judge whether a stimulus on the screen was a word, whether it had a meaning or whether they had ever seen it. While the typical frequency effects were found significant in all three definitions, the mean RT was the longest for the conventional word/nonword decision. In the meaning and familiarity decision participants were faster than the conventional no-definition condition. The results suggest that the conventional instructions are not the fastest at least for Korean, and the best definition for word recognition studies may be different from language to language.
  • 潜在/顕在記憶課題を用いた検討
    宮代 こずゑ, 平山 咲月, 原田 悦子
    セッションID: O1-1-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    単語の意味と合成音声の声質との印象一致による効果を検討するため,聴覚的単語完成課題(潜在記憶を測定),および聴覚的再認課題(顕在記憶を測定)を用いた記憶実験を実施した.実験は学習段階とテスト段階から構成されていた.実験は学習(あり/なし),単語の意味と合成音声の声質の印象一致(一致/不一致),学習時とテスト時の声質(同一/異なる;テスト時のみニュートラルな声質)の三要因が操作されていた(参加者内計画).単語完成課題の結果より,聴覚的なききやすさはニュートラルな声質の方が上だが,心的語彙へのアクセスは,印象一致があり,かつ学習時とテスト時の声質が同一の場合に促進されたことが示唆された.また,再認課題成績との比較から,単語の意味と声質との印象一致は潜在記憶と顕在記憶とに異なる影響を及ぼしていることが示された.これは言語的情報と非言語的情報との相互作用のパターンの違いを反映していた可能性がある.
  • 比較文化的研究
    山 祐嗣
    セッションID: O1-1-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    命題論理学では、「もしpならば、qである」という条件文の確率は、P(¬p∨q)となる。しかし、すでに多くの研究で、条件文確率は(P(q|p))と判断されることが示されている。このデータは、De Finettiの真理表に基づいてnot-pが空とみなされるとする仮定理論を支持する。私たちは、実験参加者が、いくつかのチップが入った1対の容器を与えられて、どちらが「もしpならば、qである」という条件文が正しい確率を高くするかを判断(条件文の確率)する集合比較法を採用した。また、同じように条件文賭け課題も設定した。私たちは、インターネット調査でアメリカ人と日本次からデータを収集し、どちらも(P(q|p))と判断しやすいこと、しかし場合によっては連言原理によっても判断しているという知見を得た。
口頭発表1-2 日本語セッション(社会的認知)
  • 岩渕 俊樹, 乾 敏郎
    セッションID: O1-2-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    われわれは家族,友人,仕事上の交友など,多くの人間から構成される社会的関係を維持することで日常生活を送っている.そのためには,それぞれの人が互いをどのように考えているか,ということを階層的に関係づけて理解する能力,すなわち階層的な心の理論(theory of mind: ToM)が重要である.この階層的な心の理論を検討するための方法として,本研究では戦略的ボタン選択課題を考案した.反応時間を計測して低次ToM条件と高次ToM条件の比較を行い,高次ToMの方が反応に時間を要することを明らかにした.またToMの検査として広く使用されている誤信念課題のデータと比較した結果,低次ToM条件および高次ToM条件で誤信念課題と反応時間の相関がみられ,本課題がToM機能を評価するための課題として妥当であることが示唆された.
  • 迷路課題による検討
    鈴木 佐知歌, 朝倉 暢彦, 乾 敏郎
    セッションID: O1-2-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    他者の内面にある意図を推定するためには,周囲の環境や相手の行動特性を考慮した状態での他者の行動観察が必要である.本研究では,相手の行動特性の知識を与える前後で意図推定結果に違いがあるかを調べた.実験刺激として迷路を用い,行動特性の知識なし(自己判断),行動特性学習後(学習①,②)の3条件で,agentの経路を見て,agentが目指すゴールについて評価させた.予想される行動選択確率を期待値として協力者のデータと期待値を比較したところ,角度変化小の経路の自己判断条件で差が見られた.自己判断条件では向かった先のゴールへ行く確率を高く見積もっていることから,agentの視野を考慮できず自己視点の情報を多く用いるが,行動特性獲得後はagentの視野を考慮した推定が可能になると考えられる.よって本研究で用いた迷路課題は健常成人でも誤答する可能性の高い心の理論課題である可能性が示された.
  • 動的ベイジアンネットワークによる定式化
    朝倉 暢彦, 鈴木 佐知歌, 乾 敏郎
    セッションID: O1-2-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    他者との円滑なコミュニケーションを実現するためには,他者の行動系列からそ背後にある意図を推定する機能が不可欠である.本研究では他者の意図推定を動的ベイジアンネットワークによる確率推論として定式化した.このネットワークでは他者の意図とともに行動や状態の時間発展が確率的に表現され,与えられた他者の状態遷移系列からその意図を事後確率に基づいて推定する.このネットワークを用いて,迷路内でのagentの行動系列から目指すゴールを推定させる心理実験の結果を解析したところ,agentの行動特性の知識が無い場合,それをランダムウォークで近似し,観察者視点からの情報を取り入れて意図推定を行うのに対し,agentの行動特性を学習した後では,その行動特性を反映した心的モデルが構成されるとともに,観察者視点からの情報を抑制して意図推定を行うという方略が示唆された.
  • 有賀 敦紀, 井上 淳子
    セッションID: O1-2-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    人間は希少な物に魅力を感じる(希少性効果)。二色のクッキーを用いて対象の希少性を操作した先行研究では,希少性効果が減少した対象の色に基づいて生じることが明らかにされた。本研究ではこの知見に基づき,希少性効果の生起要因を特定した。実験1において,特定の色のクッキーを被験者の目前で増加させることによって,別の色のクッキーに相対的な希少性を付与したところ,希少性効果は生じなかった。しかし,実験2において,被験者がサクラと二人で課題を行ったところ,希少性効果は生じた。以上の結果から,(1)対象の減少が希少性効果の決定的な生起要因であること,(2)他者の存在が希少性効果の生起を促進することが示された。本研究によって,商品に対する消費者の魅力形成は時間的・社会的文脈に強く依存することがわかった。
  • 楠見 孝
    セッションID: O1-2-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    全国の20-85歳の131人に対して,情報提示の事前-事後で牛肉生食または食中毒全般のリスク認知・知識を測定した。そして,6種の生肉または食中毒全体に関するリスクを伝えるパンフレットのいずれかを提示し,わかりやすさなどの評価を求めた。結果は(a)パンフレットのわかりやすさは,子どもにも分かるもの,手順や予防法を明示したイラスト入りのものが高く,その判断は,事前知識の影響を受けた。(b)リスク認知と知識は,いずれのパンフレットでも情報提供後に上昇した。(c)食中毒のパンフレットに関しては,教育年数が批判的思考態度を通して,事前のリスク知識と予防行動を向上させており,パンフレットの評価を高めていた。
口頭発表2-1 英語セッション(社会的認知,感情・動機,発達・教育・学習)
  • Tao LIU, Hirofumi SAITO, Misato OI, Shuang MENG, Victor Alberto Palaci ...
    セッションID: O2-1-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    To examine how prior experience of role-playing affects an individual’s activation in their inferior frontal gyrus (IFG) during subsequent cooperation and competition, using near-infrared spectroscopy we simultaneously measured pairs of participants’ bilateral IFG activation when they played a computerized turn-taking game. Pairs of participants were assigned to either one of two roles in the game: a Builder taking the initial move to copy a disk-pattern on a monitor and a Partner taking the second move to aid the Builder in his/her goal in a cooperative game or to obstruct it in a competitive game. Two participants changed their Builder-Partner roles in two continuous sessions. The results suggest that one could draw from prior experience of being disturbed to more tactically disturb others in the subsequent competition. The better understanding of the Builder’s position increased one’s right IFG activation when (s)he was meant to disturb in the session 2.
  • 上田 祥行, 名護谷 希慧, 吉川 左紀子, 野村 理朗
    セッションID: O2-1-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    これまでの研究で、観察者の表情が情動を変化させ、異なった知覚を引き起こすことが報告されている。本研究では、他者の特性の判断に評定者の表情が与える影響を検討した。実験では、参加者は割り箸を使って特定の表情を作るように教示され、その表情を維持したまま、画面に呈示された他者の信頼性と支配性を判断した。その結果、笑顔の他者は嫌悪表情の他者よりも信頼性が高いと判断された。このとき、評定者の表情は判断には影響を与えなかった。一方、嫌悪表情の他者は笑顔の他者よりも支配性が高いと判断され、その差は評定者の表情が嫌悪のときに大きくなった。これらの結果は、話し手と受け手が相互作用するコミュニケーション場面において、表情から推定される他者の特性判断は常に一定なのではなく、自身の表情に影響を受けていることを示している。
  • Kanji Tanaka, Katsumi Watanabe
    セッションID: O2-1-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    Learning and transfer of behavioral sequences are vital for our everyday life. Our recent work has suggested that people can implicitly transfer learned sequences (Tanaka & Watanabe, 2013); even if participants are not aware of the hidden relationship between learning and transfer sequences, they can transfer their acquired knowledge to a new sequence. In the present study, we examined whether implicit transfer would depend on the number of experience of successful and/or failure trials during learning. We adopted a basic experimental paradigm of visuomotor sequence learning and modulated the number of required successful trials in the learning session. Then, we found that the number of completed trials (i.e., successful experience) rather than error trials (i.e., failure trials) in the learning session led to better implicit transfer.
  • Yongning Song
    セッションID: O2-1-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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       It has been debated whether attending to a particular facial region, such as the eyes, is impaired in children with autism. The purpose of this study was to systematically test the poor eye gaze hypothesis postulating that children with High-Functioning Autism (HFA)/AS are impaired in their ability to attend to another’s eyes. A group with ASD (n = 14) and a paired non-ASD group (n = 19) completed three emotion judgment tasks requiring perception of expressed happiness, angry and fear respectively in a facial image masked by the “Bubbles”. Results indicated that similar to non-ASD individuals, ASD individuals used information from other people’s eyes to judge the emotion of happiness and angry. In contrast, ASD individuals failed to use the information to judge the fearful emotion from other people’s eyes compared to participants without autism. The results challenge the conventional hypothesis that individuals with ASD cannot attend to or derive information from another’s eyes, and the results suggest an asymmetric eye-gaze-ability or a selective impairment in extracting facial information expressed by different emotions in ASD.
  • Cross-Sectional Results from the SONIC Study
    Yoshiko ISHIOKA, Yasuyuki GONDO, Yukie MASUI, Takeshi NAKAGAWA, Meg ...
    セッションID: O2-1-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    We examined the relationships between false recognition and global cognitive abilities using data from 1000 Japanese community-dwelling participants in the Septuagenarian, Octogenarian, Nonagenarian Investigation with Centenarian (SONIC) Project. Multiple regression analyses were conducted with the total and five subsets of global cognitive abilities as each dependent variable, false alarm rate and hit rate as the independent variables. After adjusting for covariates (sex, education, and primary school remarks), the false alarm rate was significantly associated with all cognitive abilities. The hit rate was significantly associated with the global cognition, the recall memory, and the orientation, marginally significantly associated with executive functioning, but not significantly associated with verbal fluency and delayed memory. These results suggest that an increase of false alarm rate may reflect cognitive decline, especially explicit cognitive process, and that false recognition may be more informative for screening cognitive impairment in older adults.
口頭発表2-2 日本語セッション(知覚・感性1)
  • 黒田 怜佑, 松田 憲, 楠見 孝, 辻 正二
    セッションID: O2-2-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    本研究は,時を告げる音に関する仮想場面への没入感を測り,参加者がどの程度情景をイメージできるかを検討した。また,どのような場面や音で人は時間の共有感・帰属意識が高まるか,さらには同じ音を聴く人達との仲間意識をどの程度得られるかを併せて検討した。刺激は呈示条件(画像と音,画像のみ,音のみ)の異なるグループで,13種類の呈示刺激に対して評価させた。その結果,画像と音を対呈示したグループでもっとも高い没入感が得られた。これは,視覚情報である画像の呈示と,聴覚情報である音源の呈示を同時に行ったため,参加者はより現実に近い仮想場面を認識できたと考えられる。また,時鐘施設の俯瞰景において,特に高い没入感が得られた。本研究で得られた結果により,時鐘施設による音は高い没入感を聴く人に与えることができ,情景に対する好意度と親近性,懐かしさの上昇が没入感の上昇を促進することを示唆していると考える。
  • 松田 憲, 中元 俊介, 森岡 広樹, 樋山 恭助, 後藤 伴延, 小金井 真, 楠見 孝
    セッションID: O2-2-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,PMV指標を用いて温度感を操作し,単純接触効果に及ぼす温熱環境の影響について検討した。参加者には,温熱環境に順応させた後にPMV5水準-2:さむい,-1:ややさむい,0:中立,+1:ややあつい,+2:あつい)と呈示回数5水準(0回,1回,5回,10回,15回)を操作して無意味輪郭図形を連続呈示し,刺激に対する好意度と親近性,新奇性,温冷感を7段階で,再認を2段階で評定を求めた。実験の結果,単純接触効果はややあつい環境(PMV+1)で検出された。一方で,さむい(PMV-2)ないし中立(PMV 0)な温熱環境下では単純接触効果は得られず,あつい環境下では提示回数の増加とともに一貫した傾向は見られなかった。以上より,単純接触効果研究では従来考慮されてこなかった温熱環境を,外的なノイズ要素として統制することの重要性が示されたといえる。
  • - 発生音圧と描画サイズとの適合性 -
    永井 聖剛, 山田 陽平, 河原 純一郎
    セッションID: O2-2-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    我々は近年,概念的レベルでの刺激-反応適合性がみられることを報告しており,この抽象化されたレベルでの情報共有は運動出力間でも生じている可能性が指摘される。本研究では,発声と手運動という異なる運動出力間での適合性について検討した。実験では被験者に,大きな声あるいは小さな声を発声しながら,小,中,または大の3種類の大きさの円を描画するように求めた。結果から,大きな声を出しているときには小さな声を出しているよりも,描画される円の大きさが大きくなり,異なる運動反応において運動の強さ/大きさに関する運動−運動適合性が生じることを示唆された。発声と手運動のように異なる運動反応であっても,それらに関連する情報は抽象化されたレベルで(例,大-小,強-弱)共通に表現され,相互に影響を与えるものと考えられる。
  • 笹岡 貴史, 乾 敏郎
    セッションID: O2-2-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    刺激中の人物の視点からの対象の見えをイメージする視点取得課題中の実験協力者の脳活動を計測した.連続/離散的に人物が移動する条件の比較により,前者で右側頭頭頂接合部(TPJ)と左運動前野,後者で右縁上回と右上頭頂小葉,小脳に活動が見られた.右頭頂葉は対象中心座標系でのイメージ生成への関与が知られており,両条件での右頭頂葉の活動は他者視点でのイメージ生成を反映していると考えられる.特に右TPJは電気刺激により体外離脱体験が生じることが報告されており,連続的に人物が移動する条件では刺激中の人物に自己を移入させることで他者視点でのイメージ生成が行われていたことが示唆される.両条件で移動量が大きいとき内側前頭前野(mPFC)の活動が見られた.mPFCは自己視点でのイメージの抑制に関わっていると考えられ,mPFCと右頭頂葉によって視点取得機能が実現されていることが示唆された.
  • 飯村 大智, 朝倉 暢彦, 笹岡 貴史, 乾 敏郎
    セッションID: O2-2-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    吃音症と呼ばれる言語障害の背景には発話運動制御の問題が示唆されている。本研究では、吃音者は聴覚フィードバックへの依存度が高いこと、及びその背景としてフィードバックの予測・照合の精度が悪いという2つの仮説を立て、行動実験を行った。実験は、自分の声が遅れて聞こえる状態を順応させた上で(0ms;順応なし、66ms、133ms)、自分の声の同時性判断(0ms~150ms)が各条件でどのように変化するかを調べた。結果は非吃音者と比べて吃音者で順応によって同時性判断の判断基準が大きく変化し、フィードバックに依存した運動制御を行っていることが示唆された。一方で同時性判断の精度は非吃音者との有意差はなかったが、吃音者で回答の判断基準と精度の両変数には有意な相関係が見られた。吃音者では聴覚フィードバックへの依存と予測・照合の精度の問題には関連性があり、吃音者に特異的な発話の運動処理の問題が推察される。
口頭発表3-1 日本語セッション(注意)
  • 運動変更時間の年齢差の検討
    勝原  摩耶, 井関 龍太, 上田 彩子, 熊田 孝恒
    セッションID: O3-1-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    先行研究(勝原他,2013, 認知心大会)から,高齢者における運動変更の遅延の背景には前後の運動の終了/開始に関わる並列処理の困難さが関わっていることと,事前予告による変更準備の効果が高齢者において若年者よりも少ないことが示された。ただし,高齢者においてもより長い変更準備期間があれば,運動変更時間が縮小する可能性も考えられる。しかし一方で,運動1の継続期間が長いとその後の運動変更時間を長くする可能性もある。そこで,本研究では,予告による変更準備に対して,運動1の継続期間と,変更タイミングまでの準備期間の長さがどのように影響するのか,とそれらの年齢差について検討した。そのため,Action change Task(手の運動変更課題;勝原他,2013)を改変した実験1,2を実施し,2つの年齢群における運動変更時間を比較した。
  • 新・朝食課題による検討
    原田 悦子, 大川 貴巨
    セッションID: O3-1-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    成人の認知的制御の過程をとらえるために,複数のタスクを同時に管理しながら力動的に達成するタスクマネジメントを求める新朝食課題を作成し,大学生参加者による検討を行った.朝食課題はCraik & Bialystock (2006)の課題を基に,複数人数分の朝食を同時に作ることを求め,同時に「追加オーダー」に対する力動的な対応も求められる5つの課題場面から構成された.主課題である朝食作りにおける達成と副課題である配膳課題との関係をみたとき,「副課題の達成を落としながら,主課題の成績を落とさない」参加者群がおり,副課題も主課題も達成成績が落ちる参加者群よりも,主観的なタスクマネジメント力が低いことが示唆された.今後,こうした個人間差と他の課題成績の関係,また加齢による変化の検討を行っていく予定である.
  • 河西 哲子, 田中 翔, 山田 優士
    セッションID: O3-1-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    本研究は物体または知覚的なまとまりを単位として選択する注意機能の性差について,事象関連電位(ERP)を指標として検討した。男女各12名の日本人大学生・大学院生に,頭皮上からERPを測定しながら,左右の視野に同時提示された文字のうち決められた視野の低頻度標的を検出する課題を行った。左右の文字を大きな楕円で囲んだ共通条件と,この楕円図形を分割し左右入れ替えた非共通条件があった。結果として行動反応に統計的に有意な性差はなかった。しかしERPの空間的注意効果(注意側の対側半球と同側半球の差)は女性において,P1立ち上がり潜時区間(刺激提示後70-110 ms)で非共通条件が共通条件に比べてより陰性に,N1立ち上がり区間(130-160 ms)ではより陽性になった。これらの結果は,女性では知覚処理の早い段階で課題に関連しない物体構造が注意を誘導することを示唆する。
  • 興梠 盛剛, 松田 憲, 楠見 孝
    セッションID: O3-1-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は運動物体の接近回避行動が対象への生物性認知や選好に与える影響を検討した。刺激は黒円図形を用いて,物体運動の進行方向変化の方向(接近,回避,統制)と回数(1,3,7),タイミング(一定,ランダム)を操作した。その結果,変化回数の上昇に伴い生物性評価は上昇し,好意度評価も同様に上昇した。松田ほか(2013)の先行研究同様に,生物性認知の生起により対象への注意が喚起され,能動的に注視することで好意度評価の上昇に影響したと考えられる。また,接近行動による生物性評価の上昇も見られ,接近行動への注意喚起によって好意度評価に促進的影響が見られた。さらに回避条件では,生物性認知の生起に関わらず遠ざかる運動に対して能動的に追視することで,好意度評価に対して促進的に影響することが示された。これらの結果は,刺激に対して能動的に目を向ける行為に選好を生じさせる要因が存在することを示唆している。 
  • 三宅 明日香, 福田 玄明, 植田 一博
    セッションID: O3-1-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    人間はボールの衝突などの視覚情報の変化から因果性を判断することができる.本研究では,複数の衝突が短時間に連続して起こる場合に,どのように因果性が判断されるのかを実験的に検討した.実験では,因果性のある/ないものを含む7組のボールの衝突がほぼ同時に起こる動画を用いて,その内の1組の因果性を判断させた.どの衝突の因果性を判断するかがあらかじめ指定されず,動画終了後に指定された場合,実験参加者は正しく因果性を判断することが出来なかった.しかし,その場合でも,特定の衝突ではなく,因果性のない衝突が全体で何割あったかを回答させると,ほぼ正確に判断できることができた.割合が回答できるということは,個々の衝突を知覚できていることを意味するため,これらは矛盾を含んでいるように見える.この結果をもとに,我々の因果性判断のメカニズムを定量的に検討した.
口頭発表3-2 日本語セッション(記憶,思考・言語)
  • 服部 雅史, 織田 涼
    セッションID: O3-2-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    閾下プライミングなどの潜在情報が,洞察問題解決のような高次認知活動も促進することが明らかにされているが,その効果が現れない場合がある。特に,新しいアイデアを考えようとする意識的な努力が,有益な潜在情報の利用を妨げる可能性がある(意識的コントロールの逆説的抑制効果)。このような潜在認知と意識的コントロールの相互作用のしくみについて二つの仮説を立てた。過剰集中仮説は,過剰な集中が有益な情報の取り込みを妨害すると仮定する。ミスラベル仮説は,潜在的に侵入した情報には「陳腐ラベル」が付与されると仮定する。これらの仮説を検証するため,課題への集中を促す条件(集中条件)を設定して実験を行った。実験の結果,過剰集中仮説がおおむね支持されたが,一部の結果は仮説と整合的ではなかった。教示による意識的コントロールの誘導の妥当性など,方法論的な検討課題もあるため,引き続き証拠を累積する必要があるだろう。
  • 渡邊 勝太郎, 山田 歩, 福島 洋一, 植田 一博
    セッションID: O3-2-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    本研究では、休憩が創造的思考を促進する心理学的な効果について実験的に検討した。実際のオフィスでの休憩を考慮し、休憩中に場所を移動し課題とは関係のない活動を行う条件、場所を移動せずに休憩する条件、休憩しない条件の3条件間で、Unusual Uses Task (Guilford, 1967) で生成されたアイデアの質を比較した。その結果、アイデアの独自性でのみ条件間に有意差が見られ、場所を移動せずに休憩する条件が休憩しない条件よりも優れていた。この結果は、ある種の休憩が創造的思考を促進する可能性を示唆している。
  • 浅川 伸一
    セッションID: O3-2-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    ディープラーニングにおける多層化の意味について考察した。3層パーセプトロンの完全性からは,多層化する積極的な意味が見いだせない。しかし,一般化線形モデルにおける高次相互作用と層化を同一視すれば,解析的に多層化の意味付けが明らかになるのではないかという視点を導入できる。そこで,このことを考察した。
  • 杉森 絵里子
    セッションID: O3-2-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    形態類似性に敏感な人は、より頻繁に、実際は一度も体験したことがないのにすでにどこかで体験したことのように感じるデジャビュ体験をすることを明らかになっている。ただし、この「形態類似性への敏感さ」についての詳細は現在の所明らかになっていない。統合失調症患者は健常者と比較してデジャビュ体験の頻度が高いこと、また、統合失調症患者や統合失調症傾向が高い健常者は創造力が高いことから、「形態類似性への敏感さ」には「創造力」が関わっていることを仮説として研究を行った。その結果、デジャビュ体験の頻度が高い人は低い人と比較して、その画像の解像度の低い状態で、以前に体験したシーンと類似していると回答する傾向が高いことが示された。つまり、現在経験しているシーンから無意識的に創造力を働かせ、過去に体験したシーンと関連づけている可能性が示唆される。
  • 学習およびテスト前のhand-clenchingがエピソード記憶に及ぼす影響
    北神 慎司, 石井 香澄, 高橋 知世, 阿見 沙妃子
    セッションID: O3-2-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    Propper et al. (2013) は,「学習前に右手」で,「テスト前には左」で小さなゴムボールを握りしめる(hand-clenching)ことによって,他のパターンに比べて,単語の再生成績が向上することを示している.しかしながら,先行研究およびその実験結果に関する問題として,統制群と比較して記憶成績が向上しているわけではないという点が指摘できる.そこで,本研究では,DRMパラダイム(Roediger et al,. 1995)を用いて,Propper et al. (2013) の研究の再現可能性および虚再生への影響を検討した.その結果,先行研究の再現可能性が担保されただけでなく,hand-clenchingの効果がより強く示されうることが明らかとなった.
  • テストまでの時間的距離の認識と虚記憶
    伊藤 友一, 池田 賢司, 小林 正法, 服部 陽介, 川口 潤
    セッションID: O3-2-6
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    日常の学習場面では,学習直後の小テストや数カ月後な期末テストなど,時間的 距離の異なる目標が設定され得る。時間的距離の認識の違いは認知処理様式に影響することが示されているが,記憶への影響については検討されていない。そこで,本研究では時間的距離と記憶の関係について検討するために2つの実験を行った。 まず,参加者はテスト時期を1分後 (直後群),または3カ月後 (学期末群) と教示された。その後,実験1の参加者のみ,テストに向けた学習場面をイメージした。続いて,9リスト分の単語を学習した。最後に,両群に対してremember/know判断を伴う再認テストを行った。結果として,直後群に比べ,学期末群で虚再認・ 正再認時のremember反応率が統計的に有意に高いことが示された。これは,時間的距離の遠いテストを想定した場合に,より意味的関連性に基づく符号化処理が行われていたことを示唆している。

口頭発表4-1 日本語セッション(発達・教育・学習)
  • 西尾 直也, 朝倉 暢彦, 乾 敏郎
    セッションID: O4-1-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    心の理論による他者の心的状態を理解する過程には,心についての一般的な知識に基づくとする立場の理論説と自己の心的状態を他者に投影して他者理解を行うとする立場のシミュレーション説が提唱されている.先行研究では,他者の心的状態のうち誤信念を推測する理論説に基づくモデルが提案されているが,誤信念理解の発達過程や誤信念以外の心的状態の理解との関連やシミュレーション説が考慮されていない.そこで,本研究ではシミュレーション説に基づいた心の理論のベイジアンネットワークモデルを提案し,様々な心的状態の理解の発達過程と相互関連を検討した.その結果,他者の信念や知識を理解する心的機能の同時発達が誤信念という高次の心的機能の獲得に必要であることが示唆された.
  • 川崎 真弘, 米田 英嗣, 村井 俊哉, 船曳 康子
    セッションID: O4-1-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    発達障害児に見られる「逆さバイバイ」のように、視点と身体表象の重ね合わせはコミュニケーション時の発達障害の一つとして重要な未解決問題である。本研究では、視点と身体表象の重ね合わせを健常者と発達障害者で比較し、発達障害の方略の違いを調べた。PCディスプレイ上に呈示された人の両手のうち一方がタッピング動作をし、被験者はその動作と同じ手でタッピングをすることが要求された。方略の聞き取り調査より、定型発達者の多くが視点取得の方略を取るのに対して、発達障害群の多くは逆に心的回転の方略をとった。その方略の違いは発達障害のスケールと有意に相関した。また発達障害者は定型発達者とは異なり、自分がとった方略と異なる方略を強制されると有意にパフォーマンスが悪化した。今後の課題として同時に計測した脳波・光トポグラフィの結果を合わせて発達障害の方略の違いに起因する脳ネットワークを明らかにすることを目指す。
  • 外山 紀子
    セッションID: O4-1-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    心因性の身体反応(例;緊張してお腹が痛くなる)にみられるように,心と身体は相互依存的である。では,子どもは心的要因が身体現象に影響を与えることを理解しているだろうか。これまでこの問題は「病気の感染」や「心因性の身体反応」といった個別の身体現象について検討されてきた。一方,本研究では,心身相関的理解は現象依存的であるという仮定にたち,成長や病気といった複数の身体現象に関する理解を比較した。なお,ここでは心的要因として食べ物の味覚経験(おいしいと思うかどうか),身体現象として成長・病気のかかりやすさ・病気の治りやすさを取り上げた。5歳児から大学生を対象とした2つの実験の結果,身体現象に心的要因の影響を認めるかどうかは身体現象によって異なること,病気の原因については,どの年齢グループでも認めにくいこと,他の身体現象については,年齢が低いほど心的要因の影響を認めやすいことが示された。
  • 予見経験の有無についての調査研究
    山下 雅子, 前田 樹海, 北島 泰子, 辻 由紀
    セッションID: O4-1-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    入院患者の死期予見経験を持つ看護職の存在については、逸話として耳にすることはあってもその実証的研究はほぼ皆無である。本調査では、それが実体のない風聞なのかそれともそのような予見経験を自覚する看護職は実在するのかを実証的に調べることにより、一般にはあまり知られていない、看護職内での直感的推論の例を示すデータを提示することを目的とした。結果として調査対象者(277名)の約3割が、生命徴候変化の無い死期予見経験がある、またはそのようなことができる看護職を知っていると報告していることから、患者の死期予見は全くの風聞ではなく、少なくともその経験を自称する看護職は稀な存在ではないと考えられた。
  • 予見できる看護職の特性
    前田 樹海, 山下 雅子, 北島 泰子, 辻 由紀
    セッションID: O4-1-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    誰の目にも明らかな生命徴候の変化がないにもかかわらず、入院患者の死が近いことがわかるとされる看護師の存在が現場ではよく知られている。これらの看護師がもつ特性を明らかにするために看護職を対象とした質問紙調査を実施した。便宜的抽出法による看護有資格者252名中143名(56.7%)から回答が得られ、明らかな生命徴候の変化によらず入院患者の死期を認識した経験が「ある」と回答した者は47名(33.8%)であった。検定の結果、教育背景と看護師免許の有無、看護師としての経験年数が、明らかな生命徴候の変化によらず入院患者の死期を認識した経験の有無との間に有意な関連を示した。知識を蓄えるだけでなく生み出す訓練をしてきたそれらの看護師の中に、臨床現場において経験を知識として蓄積したり、経験から新たな知識を生み出すことができる者が多いことが示唆された。
口頭発表4-2 日本語セッション(知覚・感性2)
  • 井手 正和, 日高 聡太
    セッションID: O4-2-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    隣人の声が飛行機の離陸音によってかき消されてしまうように,ある感覚情報の知覚は,同一の感覚情報における別の入力によって抑制されることが知られている。こうした知覚的なマスキング効果は,個々の感覚情報に対する脳内の神経活動が直接的に相互作用することで生じることが指摘されている。近年,異なる感覚情報(例えば視覚と触覚)に対して同一の細胞群(bimodal neuron)が応答することが報告されているものの,異種感覚間で知覚的なマスキング効果が生じるかどうかは検討されていない。本研究では,手に提示された触覚刺激によって視覚的な見えが阻害されることを見いだした。さらに,この効果は聴覚刺激を提示したとき,また手以外に触覚刺激を提示したときには見られず,視触覚刺激が空間的・時間的に近接して提示された時に選択的に生じた。以上の結果は,視触覚感覚入力とそれに応答する神経活動が密接かつ直接的に相互作用することを示唆する。
  • 1症例における検討
    今泉 修, 浅井 智久, 金山 範明, 河村 満, 小山 慎一
    セッションID: O4-2-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    運動に対する視覚フィードバックが遅延すると自己主体感(自己が行為を起こしている実感)が減少する。他方で,切断後にその存在を感じる幻肢においては,運動と視覚フィードバックのタイミングと幻肢の運動感覚(自己主体感)との関連は検討されていない。本研究では左腕切断患者1名の協力を得て,遅延視覚フィードバックが幻肢の運動感覚に及ぼす影響を調べた。実験では,健常側の右手の開閉運動を撮影して左右反転させてモニタに映し,左腕前方へ呈示した。遅延0, 250, 500ミリ秒のいずれかの映像を観察した後,幻肢の運動感覚の強さを評価した。結果,遅延250, 500ミリ秒条件では運動感覚が減少したが,幻肢の開閉運動の位相を遅延500ミリ秒映像のそれに合わせるよう教示すると,運動感覚が増大した。遅延視覚フィードバックが幻肢の運動感覚を減少させること,トップダウン情報も幻肢の運動感覚に影響することが示唆された。
  • 利き手と道具の種類の関係
    片山 正純, 木村 優太
    セッションID: O4-2-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    コップには多くの種類があるにもかかわらず,迷うことなく瞬時に見つけ出すことができる.このような道具の認知において,対象物操作の感覚・運動経験により獲得した身体モデル(身体の脳内表現)が重要な役割を果たしていると考えている.この観点から,本研究において,変形した手の身体モデルを学習するための新しい実験パラダイムを構築し,この身体モデルが「道具と見なすサイズ」に及ぼす影響を利き手と道具の種類の観点から調査した.この結果,主に利き手で使用する道具(ニッパや毛抜きなど)では,利き手の変形した手に関して学習した場合にはより大きなサイズの道具をその道具と見なすように変化した.一方,非利き手の変形した手に関して学習した場合では変化が見られなかった.この結果は,道具と見なせるサイズかどうかを判定する際に手の身体モデルが関与している可能性を示唆している.
  • 小鷹 研理, 石原 由貴
    セッションID: O4-2-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    目を閉じた状態で一方の手でラバーハンドに触れると同時に, もう一方の手の対応部位が触覚刺激を受けることで, 自己接触の感覚が生起される(STI:self-touch illusion). STIの誘起時,「触れる手」と「触られる手」の位置感覚は, 互いに引き合う方向にドリフトすることが知られている. 手を交差しない状態では, 「触られる手」と比して「触る手」のドリフト量が優位となることが示されているが(Aimola Davies et al., 2013), そうした非対称性が生じるメカニズムは未だ不明である. 本実験において, 手の交差がSTIのドリフトに与える影響を調べたところ, 交差によりSTIのドリフト量が大幅に上昇すること(1), 非交差状態において観察される「触る手」を優位とするドリフトの非対称性が, 交差状態において消失し, ドリフトのパワーバランスが多様化すること(2)が明らかとなった. 以上の結果は, ドリフトが誘発される要因を同定するうえで重要な手がかりを与えるものである. 
  • 岡村 友俊
    セッションID: O4-2-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    人は五感情報から周りの世界を認識しており、その際起こる感覚統合についての研究は数多く行われているが、過去の研究で三感覚以上の情報が同時に入ってきた場合についてはほとんど行われていない。本研究では視覚画像、効果音、触覚デバイスを用いて五感情報における視・聴・触覚の感覚統合について検討を行った。実験では視覚、聴覚、触覚三感覚の運動刺激を同時提示して反応時間を調べた。その結果、単独よりも複数の感覚を同時に提示した方が反応時間は短くなり、また単独の刺激では発生し得ない短い反応時間が複数の刺激を提示した際に確認された。これらの結果は感覚統合によって反応時間の短縮が起こった可能性を示唆している。
ポスター発表1 知覚・感性,社会的認知,発達・教育・学習,一般
  • 時間再生法による検討
    新井 志帆子, 川畑 秀明
    セッションID: P1-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    時間は,意識された時には既に過去であるため,時間知覚には記憶の働きが関与していると考えられる。既に多くの研究により,情動が時間知覚に関与していることも示されている。本研究では, 絵画鑑賞による美的経験が,短い時間の記憶にどのような影響を及ぼすのかについて,円形刺激の提示時間について絵画刺激の提示時間で再現するという,時間再生法を用いて検討した。実験の結果,提示時間が短いほど過大評価されやすく,長いほど過小評価されやすいVierordt’s Lawが示唆された。一方,美しさ評定の違いによる時間の再現への影響は確かめられなかった。これまでに短い時間と長い時間の知覚の神経機構の違いや,特定の情動が短い時間知覚に影響を及ぼすという報告がなされている。本研究の結果は,美的経験は情動より気分に近い感情であり,短い時間よりも長い時間へ影響を及ぼす可能性が示唆された。今後は,より長い提示時間の再生法による検討をする必要がある。
  • 長 潔容江, 原口 雅浩
    セッションID: P1-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    長・原口(2013)は,絵画の規則性および複雑性と評価の関係について検討し,規則性と評価の間には逆U字の関係がみられることを示した。しかし,複雑性には法則性が見いだされなかった。Nadal(2010)は,複雑性について,要素の多さ,構成のばらつき,非対称性の3側面があること,および,複雑性の側面ごとに美しさとの関係が異なり,要素の多さは比例関係,構成のばらつきはU字関係,非対称性は関係がないことを示している。本研究では,複雑性は3側面あるというNadal(2010)の立場から,絵画の複雑性と評価の関係を検討した。複雑性と評価性の各得点で回帰分析した結果,要素の多さと評価は比例関係,構成のばらつきと評価は逆U字関係,非対称性と評価には関係がないことが分かった。一部,Nadal(2010)の結果と異なったものの,絵画の複雑性は複数の側面をもち,それぞれ評価との関係が異なることが示唆された。
  • 高橋 知世, 北神 慎司
    セッションID: P1-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    美的ユーザビリティ効果とはWebサイトなどのインタフェースに対して、美しいものは使いやすいだろうと判断してしまう現象である。美的ユーザビリティ効果の生起メカニズムはいまだ未解明であるが、大半の美しさが流暢性と呼ばれる情報処理の容易さに規定されることを踏まえると、流暢性によって美的ユーザビリティ効果を説明できる可能性があると考えられた。本研究では刺激として8種類のWebサイトのコントラストを4段階に変化させたものを用いた。参加者はこれらの刺激から8枚を順次提示され、美しさと使いやすさを測定する質問に答えるよう求められた。結果として、本研究でも美的ユーザビリティ効果が生じることが確認された。また、流暢性が高い刺激を提示された時ほど、美しさの判断および使いやすさの判断が高くなることも示された。よって、流暢性は美的ユーザビリティ効果の生起メカニズムを解明するための重要な要因だと考えられる。
  • 中村 航洋, 川畑 秀明
    セッションID: P1-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    近年の神経美学的研究は,絵画の美的印象評価には眼窩前頭皮質内側部の脳機能が密接に関連していること明らかにしてきた。本研究では,経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を用いて,眼窩前頭皮質の神経活動を一時的に変容させることによって,抽象絵画の美的印象評価における脳の因果的役割について検討した。眼窩前頭皮質に陰極刺激を行い,一時的に脳神経活動を抑制すると(陰極刺激群),絵画に対する美しさの印象は低減する一方で,絵画の醜さの印象は変化しないことが明らかになった。さらに,電気刺激を行わない統制群においては,絵画の美しさは醜さよりも早く判定されるという美的判断の優位性が認められたが,陰極刺激群においては,脳電気刺激後にこの優位性が認められなくなった。本研究の結果から,眼窩前頭皮質の脳神経活動が美的印象評価の神経生理学的基盤であり,自動的な美の認識を可能にしていることが示唆される。
  • 山本 偲, 漁田 武雄
    セッションID: P1-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    色に対する情動反応を測定する研究において,背景色に関する研究はされていなかった。焦点情報を色刺激,環境的文脈を背景色とすると,色彩情動反応は色彩に対する情報処理の結果と言える。焦点情報を認知する時に環境的文脈が影響を与えているのであれば,背景色も色彩情動反応に影響を与えていると考えられる。そこで本研究では,背景色の明るさ,背景色の情動反応等,環境的文脈としての背景色が与える情動反応への影響を探るため,3種類(白・グレー・黒)の背景色において色に対する情動反応を測定した。その結果,背景色自体が色相に対する情動反応に影響を与えることがわかった。また,交互作用が有意でないため,背景色の違いによって色相情動反応が変化するということはない。これを踏まえ,色相とトーンの組み合わせにおいて,情動反応に与える背景色に注目することが求められる。
  • 森田 愛子
    セッションID: P1-6
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    奇異な事物のほうが,ごくありふれた一般的な事物より覚えやすいという奇異性効果は文やイメージ,画像など,様々な刺激材料を用いた研究で確認されている。しかし画像の色に関しては,典型的な彩色を施した場合のほうが奇異な彩色を施した場合より記憶成績が高いという典型性効果が得られている。本研究では,奇異な彩色を施した画像に対して処理負荷が高くなる事態で,色の典型性・奇異性効果について検討した。学習セッションでは,典型的・非典型的・奇異な彩色を施した60の画像を呈示し,何の画像かを判断させた。再認セッションでは参加者を彩色群とモノクロ群に割り当てた。彩色群では再認時の画像が学習セッション時と同様に彩色されており,モノクロ群ではされていなかった。再認テストの結果,全般には典型性の効果がみられなかった。しかし“奇異色で彩色されていても,その事物が何かがわかりやすい”場合には,奇異色刺激の誤答率が高かった。
  • 色彩施工から約1年経過後のフォローアップスタディ
    蓑内 絵梨, 松原 千春, 森下 洋子, 海老原 聡子, 行場 次郎
    セッションID: P1-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    被災した東北地方のある仮設住宅において、既存の白い外壁に癒し効果の期待される色彩を施した鋼板をカバーし、施工前後における居住者・周辺住民の心理状態を比較検証した結果、いずれの指標でもポジティブな方向に変化がみられた。今回は、その効果が施工後、約1年しても持続するかどうか追跡調査をおこなった。その結果、居住者の感情状態も周辺住民の印象評価も、施工直後とほぼ同様にポジティブな方向にあることが確認された。これらの知見により、人々の快適な生活を支援する一手段として、色彩が感情心理に与える効果を活用していくことの有効性が示された。
  • 猪股 健太郎, 野村 幸正
    セッションID: P1-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    視覚シンボル(ピクトグラム)をデザインする際には,物体の形を単純化させ,指示対象のよいプロトタイプ(典型例)であることが重要であると指摘されている。単純化の観点からは,視覚シンボルには奥行き表現の無い,物体の正面や真横からの見えを反映させることが適切であると考えられる。しかしながら一方で,視覚的な典型性に関する研究において,物体は正面や真横ではなく,やや斜め前方からの見えが最も典型的な角度であるとされている。これらの議論からは,視覚シンボルのデザインを行う上で単純性か典型性のどちら特性を優先してデザインに考慮する方が,より容易に理解されるデザインとなるのか,不明確である。そこで本研究ではこの点に関して検討を行った結果,意味明瞭度と典型性の間には高い相関が見られたが,奥行き表現の無い視覚シンボルはある視覚シンボルよりも意味明瞭度が高かった。
  • 齊藤 俊樹, 大谷 昌也, 金城 光
    セッションID: P1-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    視線のカスケード現象とは,好きなものを選ぶ判断(選好判断)の際に,選択決定よりも時間的に先行して選択する刺激へ視線が偏るという現象のことである (Shimojo et al., 2003)。これまでの研究でカスケード現象は知覚していない記憶上の刺激に対しても生じることが報告されている。本研究では,記憶上の刺激に対してもカスケード現象が起こるのか,記憶保持時間によって視線の偏りの強さが変化するかを実験1で検討した。先行研究ではカスケード現象が選好判断以外でも生じる可能性が示唆されており,実験1において選好判断と選嫌判断での視線の動きに差がみられなかったことから,実験2では判断条件を増やしカスケード現象の違いを検討した。その結果,選好判断以外の判断でも最終的に選択した刺激への視線の偏りが認められた。本研究より,視線の偏りが好意判断に特別に影響していない可能性が示唆された。
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