幼児期では対象のパターン化された標準型が描かれ易いが、次第に特殊な向きを表す非標準型の描き分けも状況に応じて可能になる。本研究は非標準型の描画構成に関わる認知的要因として、描く大きさと位置を捉えるための空間認知能力と標準型への反応を抑制する能力に着目した。実験Ⅰでは4~6歳児が描画課題、空間認知課題、標準型の抑制課題の各々に参加した。結果、描画では通常描かれ難い非標準型が5・6歳児で見られ、標準型よりも非標準型を描いた者の方が空間認知および抑制の両得点が高かったことから、描画構成の発達に空間認知と標準型の抑制が関わることが示された。実験Ⅱでは実験Ⅰで標準型を描いた5・6歳児に対し、空間認知および抑制の訓練課題を行った。結果、空間認知および抑制課題の得点が共に向上し、67%の者が非標準型の描画反応に転化したことから、描画構成と認知的要因の因果性が示唆された。