抄録
家庭内における共助は,各家族構成員が持つ防災行動に対する価値観の交互作用と考えることができる。そのため,防災行動の指針となる価値観の表出によって適切な防災行動が選択されることが期待できる。本研究では,防災行動の指針となる価値観表出のための価値観再考の契機として,価値観に関する前提知識の教示が家庭防災行動意図に与える影響について検討を加えた。その結果,災害リスク認知,災害不安,主観的規範(家庭),防災行動意図(家庭)の4項目において,価値観知識が提示された方が,防災知識を提示されるよりも評価値が高かった。一方,災害への関心,ベネフィット認知(家庭),コスト認知(家庭)については,有意差は見られなかった。これらの結果は,防災教育として防災知識を与えるだけでなく,価値観に関する前提知識を与えることが家庭内防災行動意図を高めることを示すものであるといえる。