抄録
日本語には、漢字・カタカナという異なる表記法が存在しており、見た目・使用法、それぞれ大きく異なる。本研究では、表記が思考に与える影響について検討を行った。具体的には、3都市名を漢字(例:岡山・広島・長崎)またはカタカナ(例:オカヤマ・ヒロシマ・ナガサキ)で呈示して、同じグループであると思う2都市の選択、ならびに選択理由の回答が求められる都市カテゴライズ課題を実施し、表記の違いがカテゴリー化に与える影響ついて検討を行った。結果として、漢字で都市名を呈示した場合は地理的近接性に基づいたカテゴリー化(岡山・広島を“中国地方だから”という理由で選択する)が行われやすく、一方でカタカナ呈示時は文脈的類似性(ヒロシマ・ナガサキを“原爆が投下されたから”という理由で選択する)に基づいたカテゴリー化が行われやすかった。以上、表記の違いによって異なる思考プロセスが生み出されることが明らかになった。