抄録
運転映像中に提示される視標の検出課題中の脳活動をfMRIによって測定した.実験では,水平線上の5カ所のうち1カ所に視標が提示され,実験協力者はできるだけ早くボタン押しを行った.実験条件は車速(60, 160km/h)×ピラー(垂直,傾斜)の4条件であった.反応時間の分散分析の結果,ピラー傾斜条件で右端(ピラーの外側)の視標検出が有意に遅いことがわかった.視標提示後2秒間の脳活動の分散分析の結果,ピラーと視標提示位置の交互作用が左楔前部に見られ,その活動は右端の視標提示時にピラー傾斜条件で活動が大きかった.先行研究でADHDや自閉症の青年に楔前部の過活動が報告されており,楔前部の活動はピラーの角度によって生じる運転と非関連な情報に注意が捕捉され,より注意のリソースが視標検出に必要になったことを反映していると考えられる.この結果は,脳活動測定を安全な自動車の設計へ利用できる可能性を示している.