本研究の目的は,リスクコミュニケーションにおける数値情報の理解に影響を及ぼすニュメラシー(numeracy)の影響について検討することである。そこで,リスクリテラシーを測定する客観テストと主観評定尺度の日本版を作成し,1300名の被災地及び首都圏住民にネット調査をおこない,リスク情報理解に及ぼす影響を検討した。その結果,放射線に関するメッセージにおける数値の理解容易性は,客観的ニュメラシーとは.25の相関,主観的ニュメラシーとは.66の高い相関があった。また,放射線知識(.40),科学リテラシー(.25),批判的思考態度(.23),メディアリテラシー.(17)とも相関があった。これは,リスクメッセージの理解を,批判的思考を土台として,科学,メディアのリテラシーとニュメラシーが支えていることを示す。