抄録
本研究では、他者間の利益のやり取りを表現する、日本語の「あげる」「くれる」の表記(例:AがBにおみやげをあげた、AがBにお金をくれた)の違いが、利益の授与者(A)、受益者(B)、およびやり取りの観察者(A-Bのやり取りを見ている「私」)それぞれの間で共益性の認知に与える影響を検討した。調査の結果、他者間の利益のやり取り(A-B間の授与イベント)を観察する立場の人間が、「くれる」を用いてそのやり取りを表現する際には、「あげる」を用いてやり取りを表現する際に比べて、受益者Bと観察者間の共益性を高く認知している一方で、授与者Aと受益者Bの共益性を低く認知していることが分かった。