抄録
先行研究は,伝達者が感情を明確に受信者に伝達する目標でしばしば比喩表現を使用することを示してきた。一方で,伝達者が感情を伝えるために使用した比喩表現が,受信者に意図した通りの感情の強度を伝えているかは明らかでない。本研究では,伝達者の感情に対する受信者の関与の有無が,受信者が比喩表現から受け取る感情の強度に影響するかを検討した。伝達者の感情に対する受信者の関与を操作した比喩表現生成課題で刺激を収集した。実験では,16名の大学生の参加者は調査で得られた3種類の伝達条件(共通,関与なし,関与あり)の比喩表現を呈示され,それぞれの表現から喚起される感情の強度を評価した。実験の結果,関与あり条件は他の条件よりもネガティブさが低く評価された。このことから,伝達者の感情に対して受信者が関与している場合に用いられる比喩表現は,受信者が感情の強度を低く評価することが示された。