抄録
日常的な文脈で視覚運動トラッキングが行われるとき,大抵はターゲットとエフェクターは共に,空間的に広がりがあるオブジェクトであるが,先行研究の多くは,空間的にコンパクトなオブジェクトを用いている。本研究では,オブジェクトサイズの違いがトラッキングに与える影響について検討した。空間的に広がりがあるオブジェクト同士のトラッキングでは,参照点の検出に伴う負荷が上昇してトラッキングが困難になる可能性がある。本研究では,オブジェクトサイズを変化させる方向として,ターゲットとカーソルを同時に変える条件と,個別に変える条件を設定し,パフォーマンスに与える影響の違いを検討した。その結果,オブジェクトが大きくなるほど,また,ターゲットの方が大きいほどパフォーマンスが低下することを発見した。こうした効果の違いの原因として,参照点検出過程,あるいは,課題の脳内表現の違いなどが考えられる。