フィクション本の読書頻度はノンフィクション本よりも語彙力と強く関連することが報告されている。原因として,テキスト内要因(フィクション本の単語出現のパターンのほうが語彙力向上に有効である,など)とテキスト外要因(フィクション本のほうが高い動機づけで本を読めるので,読書に集中でき,結果として単語の学習が行われやすい,など)が考えられるが,両者を切り分ける検討はこれまでなされてきていない。本研究では,言語コーパスに基づく語彙学習シミュレーションを行い,読書傾向によって群分けした人間の参加者の語彙テスト成績と比較を行った。その結果,参加者実験では先行研究の結果を追試できたが,シミュレーション実験ではノンフィクション本の成績がフィクション本の成績を上回るなど,食い違った結果が得られた。本結果はテキスト外の要因が上述の現象の原因であることを示唆しているが,別解釈の可能性についても併せて論じた。