抄録
本研究は,なぜ若年成人にとって高齢者とのコミュニケーションは難しいのかを明らかにするため,実際に生じる齟齬,あるいは会話や課題に対する評価の相違について探索的検討を行った.実験は実地調査から結果報告までの4回の活動で構成され,単一世代グループ(高齢者のみ/若年者のみ),混合世代グループ(高齢者と若年者)での協同作業の様子を観察・比較した.ここでは第3回「討議」活動を報告する.高齢者と若年者の間では,コミュニケーションや課題の評価に相違が見られた.また,実際の会話における齟齬の場面では,混合世代グループの若年者が話題を切り替えた際に,高齢者がその前の話題を持ち越す,あるいは緘黙する様子が観察された.こうした現象と,高齢者と若年者の活動の構築方法の違い(Ikenaga, Koyama, Tanaka, & Harada, 2017)との関係を検討し,コミュニケーションに障害が生じるプロセスを考察した.