抄録
人は日々その時々の目標を遂行するために,思考や行動を適宜切り替えなければならない。抑うつ状態にある人は,ネガティブで連続的な思考パタンである抑うつ的反すうという反応パタンを持ち,反すうの持続は切り替え機能と関連しているといわれている。反すうによる切り替えの困難を予防,緩和するための要因として体験を客観的に捉える脱中心化が考えられる。先行研究では横断研究による各変数間の関係性を検討していたが,発生,維持,悪化のどこに作用しているか未解明なところが多かった。そこで本研究の目的は二次点の縦断データから反すう,脱中心化,切り替えの変化の様子を検討して各変数の関係性を明らかにすることであった。分析の結果,抑うつ増加群はもともと切り替え得点が低いことがわかった。反すうが低下すると切り替えができ,反すうが増加すると切り替えできなくなる。一方で脱中心化が増加すると切り替えできるようになることがわかった。