抄録
身体所有感と自己操作感は身体的自己意識を形成する重要な要素であるが、その形成ダイナミクスは不明である。本研究では、VR空間に構築した仮想身体をハプティックデバイスを通じて任意に操作できるような環境を構築し、身体的自己意識の回復過程と身体運動記憶の変化を同時に記録した。外乱によって損失した身体所有感と自己操作感は、運動記憶の形成に伴って回復した。それぞれの回復カーブを運動記憶の早い成分と遅い成分に分解したところ、身体所有感は早い成分によって駆動され、自己操作感は遅い成分によって駆動されていた。身体的自己意識は、速度の異なる二つの脳内表象(ファスト・スローセルフ)によって形成されることが示唆された。