抄録
本研究では,日常レベルで表出されるほめことばに内在する意味付け(純粋・形式・感謝・皮肉)が個人の特性によってどのように調整されうるのかを検証した。特に,周囲の状況に合わせて自己を調整しようとするセルフモニタリング傾向と他者を肯定的に認識する特性である他尊感情がほめことばに与える影響を検証した。60名の参加者は,実験初日にセルフモニタリング尺度および他尊感情尺度に回答したのち,当日から二週間の間に他者を実際にほめたこと,および,ほめようとしたが他者に伝えなかった思考を回答するよう求められた。ほめことばはGoogleフォームを用いた経験サンプリングによって収集された。分析の結果,セルフモニタリング傾向の低いものは高いものに比べ,ほめことばを他者に伝えることなく思考で終わらせる傾向が確認された。また,他尊感情が高いものは,低いものに比べ,感謝のほめことばを多用する傾向にあることが確認された。