抄録
他者と共同で作業をするとき、各自がその作業を行う場合でも相手の課題に必要な認知、知覚処理、表象を共有するような認知モードになることをwe-modeという。本研究は遠隔状況においてもwe-modeが生じるかどうかを検討した。白と黒の複数のオブジェクトで構成される刺激を提示し、一人もしくは二人でそれぞれがオブジェクトの数え上げ課題を行なった。二人で行う条件では、異なる実験室にいる参加者同士をweb会議アプリで交流できるようにし、各自が異なる色のオブジェクトを数えた。各色のオブジェクトの数について一致条件と不一致条件を設け、一人よりも二人で行う場合の方が不一致条件の成績の低下が大きいかどうかをwe-modeの指標とした。実験の結果、ペアで課題を行なった場合の方が、一致・不一致条件の成績差が少なかった。遠隔状況では相手の存在がwe-modeを喚起するのではなく、ホーソン効果が生じて課題遂行を促進する可能性が示唆された。