抄録
本研究は、ヒトが他者の表情から「美味しいと感じている」かを読み取れるかどうかについて調査することを目的に行われた。はじめに、表情刺激を作成するため、大学生6名を対象に、飲料を飲んだ後の表情を5秒間撮影した。このとき、飲料の味(2条件:美味しい、まずい)と表出する表情(2条件:美味しい、まずい)の4つの組み合わせを設定した。次に、33名の大学生が撮影された表情動画に対して、「動画の中の人物が飲んだ飲料をどの程度美味しいと感じているか」の評価を行った。その結果、まずい飲料×まずい表情の動画よりも、美味しい飲料×まずい表情の動画の方が「まずいと感じている」と評価する傾向にあることが示された。美味しい表情の評価は、飲料の味による差は見られなかった。これらの結果から、ヒトは他者の表情から「美味しいと感じている」かを読み取るとき、飲料の味によって判断が異なる可能性が示唆された。