日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第20回大会
選択された号の論文の109件中1~50を表示しています
口頭
  • 上田 祥行, 石井 龍生, 阿部 修士, 音無 知展, 勝野 宏史, 吉政 知広, 浅田 稔, 稲谷 龍彦
    セッションID: O-01
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    自動運転をはじめとする人と機械の協調システムでは、しばしば機械のエラーを人が検出することが求められる。しかし、システムが優秀になるほどエラー頻度は低下し、これを見逃しやすくなってしまう。この問題は、出現頻度効果(Wolfe et al., 2005)として知られる。システムの社会実装のために、どのような人で見逃しが生じやすく、介入によってどの程度の改善が見込めるかの基礎的データが必要である。本研究では、20代から70代の600名の参加者がオンライン上の視覚探索課題に参加し、ターゲットが稀(2%)に出現するときの成績と、短期的に出現頻度を増加(50%)させた介入の効果を検討した。その結果、どの年代でも出現頻度効果が見られた。介入により見逃し率は一時的に低下したが、依然として見逃しは50%以上の確率で発生し、若年層ほど介入期間後に見逃しが早く増加した。この性質は事象の発生頻度が低くなるようなシステムを実装する上で検討されなければならない。
  • 小室 ルナ, 永岑 光恵, 沖 拓弥
    セッションID: O-02
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    近年,オンラインコミュニケーション特有の疲労状態とされる「Zoom疲れ」の要因の一つとして画面上の自己鏡像呈示による「Mirror Anxiety」の影響が示唆されているが,主観的側面からの検討に留まっている (Fauville et al., 2021)。そこで,本研究はモニター画面上の自己鏡像(刺激)の呈示有無が個人に与える認知・生理的影響について検討することを目的とし,同一参加者に対し,刺激有無の2つの状況下でストループ課題を行い,その反応時間(RT)や心理指標(STAI),心拍変動などの自律神経系指標及び眼球運動を測定した。刺激を課題1・2回目のどちらで呈示するかは参加者ごとにランダムに割り振られ,それぞれ条件1・2とした。その結果,全体として特性不安とRT,さらに課題間のRTの差分に負の相関が見られ,その関係は条件1においてより顕著であった。これらの結果から,自己鏡像呈示タイミングと不安の関係や,それに伴う認知処理への影響が示唆された。
  • 小野 史典
    セッションID: O-03
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    視覚刺激が短時間(例: 400ms)呈示された際,刺激中の注意を向ける対象や特徴の違いによって,呈示時間の長さが異なって知覚されることが示されている。これまでの研究では,注意を向ける対象や特徴を事前に選択することによって調べられてきた。そこで本研究では,時間知覚に与える事後選択の影響を調べた。実験では,異なる特徴をもつ2つの標的刺激が同時に呈示された。標的刺激の消失直後に,特徴を判断する標的が指示された。観察者は,標的刺激の呈示時間の長さを判断した後に,指示された標的刺激の特徴(形状)を回答した。その結果,注意を向けた(形状を回答した)標的刺激が大きい方が,小さい時よりも呈示時間を長く判断した。この結果は,視覚刺激の消失後に,記憶内の特定の刺激に注意を向けることで,刺激の特徴(大きさ)が時間知覚課題に影響を与えることを示している。
  • ―フルボディ錯覚を用いた検討―
    山本 一希, 中尾 敬
    セッションID: O-04
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    身体が自分のものであるという感覚である身体所有感はフルボディ錯覚(FBI)等によって検討されてきた。身体所有感を感じにくい症状をもつ離人症の事例研究では,トップダウンの認知の歪みによる症状の慢性化が指摘されている。本研究では,FBIを生起させる手続きにトップダウン認知の操作(偽の身体を自分の身体と思うように教示)を加えることで,トップダウンの認知が身体所有感に与える影響と離人症傾向との関連を検討した。トップダウン認知の操作はFBIを生起させるための視触覚刺激呈示前に行った。錯覚の指標には,視触覚刺激呈示後の恐怖刺激 (偽の身体にナイフが刺さる映像) に対する皮膚電気反応を用いた。その結果,離人症の程度が高いほど,偽の身体を自分の身体だと思わせた際に錯覚の程度が小さくなった。このことから,離人症傾向者では,トップダウン的に身体を自分の身体と認知することが,身体所有感の低下につながると考えられる。
  • 畑 美緒, 三嶋 博之
    セッションID: O-05
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    観察者の移動から生じるグローバルオプティックフロー(GF)と,対象の移動から生じるローカルオプティックフロー(LF)が,それぞれ視覚的探索に与える影響を検討した。課題は,画面の中心から等距離に,相互に等間隔で配置された8つの提示箇所のいずれかに表示される数字を視覚的に探索し,その数字を弁別した上で可能な限り早くボタンを押下することであった。GFの提示がある条件とない条件が設定された。いずれの条件においても, 8つの提示箇所の一つにLFが呈示され,そのLFが消失したと同時もしくは一定時間が経過した後にターゲットの数字が呈示された。LFの消失とターゲットの呈示の時間間隔は,0,1,3,5秒であった。実験の結果,反応時間において,「LFとターゲットとの距離」と「LFの消失からターゲットの呈示までの時間間隔」の交互作用が有意であった。これらの結果について取得した視線データとの関連で議論する。
  • 佐々木 浩亮, 福井 隆雄
    セッションID: O-06
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    VR空間における接触物体が手腕モデルへ衝突する際の速度変化や接触物体色が視覚により誘発される触知覚にどのように影響するかを検討した.VR空間上に水平に延びる円筒型パイプの中を左から右に円柱物体が一定の速さで動き,パイプに触れている手腕モデルに衝突する場所で初速度から1/10,3/10,5/10,7/10,減速なしの5段階に変化する映像を提示した.接触物体色を暖色,寒色,灰色の3種類用意した.参加者はVR空間の手腕モデルと一致するように手腕を台の上に置き,各試行直後に,触知覚の強度について5件法により主観評価を報告した.減速が大きい場合,寒色に比べ暖色,灰色である場合に主観的強度が大きくなった.また,掌表面温度変化について,色による違いは認められなかったが,実験後,すわなち,触知覚経験後の温度上昇が認められた.
  • -オンラインと直接会うことの比較-
    神原 歩, 満石 寿, 原田 祐規
    セッションID: O-07
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    コロナ禍になり,親しい人とオンライン上で時間を過ごす人が増えた。本研究は,親密な他者とオンライン上で会うことが,直接会うことと同様の身体的・心理的効果をもたらすのかを検討した。参加者は22組の友人ペアで,独り群(個室に1人),対面群(友人と同じ個室),オンライン群(zoomを介した画面越しに友人が居るが個室に1人)の3群に割り振られた。参加者は個室でストレス課題が与えられ,課題前,課題中,課題後の3時点の心理指標(肯定的感情,覚醒度)と身体指標(血圧,心拍)が測定された。その結果,課題後の身体指標に群間の差が認められ,オンライン群と対面群は,独り群に比べてストレス後の回復が早かった。一方,心理指標には群間の差は認められなかった。従って,親密な他者の存在の効果は,オンラインと対面の両方で認められることが判明した。そして,その効果は認知的プロセスを経ずに身体に直接影響を与えている可能性が示された。
  • 鎌谷 美希, 宮崎 由樹, 河原 純一郎
    セッションID: O-08
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    近年,目にする機会が増えた衛生マスク (以下,マスク) は,年齢を問わず着用者の魅力を向上させる。これは,魅力判断におけるネガティブな顔特徴が遮蔽されることに起因すると考えられているが,この遮蔽の効果が顔認知全般に及ぶかは明らかになっていない。マスクは高齢者の特徴である口元の皺などを隠すため,着用者の年齢は素顔よりも若く知覚される可能性が考えられる。本研究では,マスクによる遮蔽が高齢者と若者の顔をよりポジティブに知覚させるかを7つの側面 (年齢・魅力・好ましさ・個性・目標志向性・活力・気分) から検証した。その結果,若者はマスク着用によって年齢が若く知覚されたが,高齢者ではそのような効果はみられなかった。また,若者はマスク着用によって魅力や好ましさが高く知覚されたが,高齢者ではそのような効果はみられなかった。本研究の知見は,マスクによる遮蔽効果は着用者の年齢に依存して生じることを示した。
  • Yusuke HARUKI, Keisuke SUZUKI, Kenji OGAWA
    セッションID: O-09
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    我々の知覚には,間違いなく,ひょっとすると,といった主観的な確信度が伴うが,この確信度判断は知覚の正確さのみに依存しないことが示されている。本研究では,身体の内部状態の情報(内受容感覚)が確信度判断に影響するという仮説のもと,内受容感覚の感覚信号精度(相対的な重要性)を高めた状態で視知覚の正確さと確信度判断を測定した。具体的にはドットの運動方向弁別課題を用い,各試行前には参加者(20名,うち8名が男性)に内受容感覚(心拍)・外受容感覚(電子音)に注意を向けてもらうことで感覚信号間の精度比を操作した。その結果,内受容注意後(内受容感覚の相対精度が高い場合)では,外受容注意後と比べ運動方向弁別に関わる主観的な確信度がより保守的になることが示された。一方,知覚の正確さに条件間差は見られなかった。これらのことから,外界の知覚に関わる確信度の決定に際して身体内部の情報が参照されることが強く示唆される。
  • -集団思考と認知のゆがみの実証研究-
    野中 直人
    セッションID: O-10
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    今日、無形資産に注目が集まっている。特に、会計学においては、会計情報の信頼性に疑義を与える要因としてとらえられている。(Lev,2008)。そのような流れの中、オンバランスされていない広義の無形資産、すなわちインタンジブルズ、に対する研究が近年蓄積されている。しかしながら、これまでのインタンジブルズは演繹的に導出されたものではなく、経験から列挙されたもの、すなわち帰納的に導出されたものであると考えられる。そこで、インタンジブルズを、社会的交換価値を経済的価値に変換する認知的なプロセス、ととらえる。組織資本、人的資本、知的資本、などは、原理的にどの組織にも存在すると考えられるが、組織が認知して初めて、経済的価値に変換される。そこで、質問票をベースに、H1)インタンジブルズが多いほど、経営者と担当者の認知のずれが起こりやすい、H2)意思決定プロセスによって、インタンジブルズの認知が変わるか、を検証する。
  • 白井 理沙子, 中村 航洋, 渡邊 克巳
    セッションID: O-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    人物の内面特性や能力を顔の見た目から十分な正確さで読み取ることは難しいとされているにもかかわらず、多くの人が顔からさまざまな特性を判断できるという信念を持つ(i.e., 人相学的信念)。実際に、道徳違反的な行為に対する評価にも顔の印象が影響を与えることが知られている。しかし、人物の顔がどのように道徳的判断に影響を及ぼし、また、その過程に評定者の人相学的信念がどのように関わっているのかについては明らかになっていない。本研究は、道徳違反的行為から連想される顔のステレオタイプに評定者の人相学的信念の強さが及ぼす影響を検証することを目的とした。実験では、平均顔にランダムな視覚的ノイズを付与した顔画像を複数生成し、逆相関法により道徳違反と関連した行為に対する顔ステレオタイプを推定した。その結果、道徳違反的行為に対する顔ステレオタイプの強さは、評定者の人相学的信念の強さと関連しないことが分かった。
  • 白砂 大, 香川 璃奈, 本田 秀仁
    セッションID: O-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、複数の選択肢から1つを選ぶ場面において、「課題冒頭に1秒間の待ち時間を設けるだけで、認知資源の分配が促され、判断の正確さが向上する」という可能性を検証した。行動実験(二者択一の知覚判断課題)では、参加者は刺激呈示から1秒経過しないと回答できないようになっていた。課題中は、参加者のマウスカーソルの軌跡がフレームごとに計測された。分析は、1秒の待ち時間を設けた今回のデータと、待ち時間なしで行われた筆者らの先行研究のデータを比較する形で行われた。反応時間と回答(正誤)、およびマウスカーソルの軌跡に基づく分析の結果、「1秒待たせる」という簡単な介入が、参加者の衝動性を抑えて、正答率を高めることが示唆された。本研究の手法は、介入策(1秒待たせる)・効果の検証(PCとマウスを使用)ともに簡易的に実現できることから、実験室外の様々な場面に応用できる可能性を秘めている。
  • JIN YIMENG, 馬 春宇, LIU DANYANG, ローレンス ヨハン
    セッションID: O-13
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、読解における推論に関する認知科学視点の乏しさに応え、センテンスペアの関連を推論することにおける「好み」と「努力」について調査するものである。そして、より多くの努力を払えば、そのセンテンスペアにより多くの推論を見出し、また、より好きになる傾向があると想定する。
    本研究は、センテンスペアの関連を推論した後に、推論の有無と好感度を評価する新しいパラダイムを設計した。各トライアルにおいて、被験者は自らの推論を声出して説明するかどうかを決める。この自主的な選択は、努力のあるトライアルと努力のないトライアルを区別することができる。分析の結果、推論の有無が好みと正の相関を持つという仮説が証明された。また、推論の有無と好感度の得点は、努力のあるトライアルの方が、ないトライアルよりも顕著に高いことがわかった。この結果は、読解における努力、推論、好みの間に相関が存在することを示唆するものであった。
  • 一対比較法による読みやすさからの検討
    齋藤 岳人, 井上 和哉, 樋口 大樹, 小林 哲生
    セッションID: O-14
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    書体の読みやすさは,ヒトの記憶において重要な要因とされている。しかし,読みやすさが何をもとに判断されているかは十分に検討されていない。その中で,齋藤他(2022)は,無意味文字列を用いて,書体の日常経験(接触頻度と使用頻度)が読みやすさに影響を与えることを示した。しかし,同じ参加者に両者の評定を求めたため,参加者が単に一方の評定を手がかりにもう一方の評定を行っただけである可能性も否定できない。そこで,本研究では,読みやすさのデータを別途取得し,先行研究の日常経験のデータとの関連を検討した。一対比較法で読みやすい書体の選択を求め,選択率をもとに読みやすさを算出した。その結果,読みやすさと日常経験の相関係数は,読みやすさと接触頻度で.74,読みやすさと使用頻度で.76であり,有意な正の相関が認められた。この結果は,日常的によく目にし,使用する書体ほど読みやすいと判断されることを強く示唆する。
  • 本田 秀仁, 香川 璃奈, 白砂 大
    セッションID: O-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    集合知(個々の推定値を集約したものが正確な推定値になる)を高める方法として、アンカーに影響を受けた数値推定を活用する方法を提案する。本研究ではアンカーに影響を受けた数値推定を用いることで、多様な視点に基づく推定値を集めることができ、集合知を高めることができるという仮説を立てた。認知実験と計算機シミュレーションを実施し検証を行ったところ、アンカーに影響を受けた推定値をうまく活用することで、よい集合知を達成できることが明らかになった。
  • 松田 憲, 畔津 憲司, 齋藤 朗宏, 有賀 敦紀
    セッションID: O-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,定番選択肢の存在が選択のオーバーロード現象に与える影響について検討することを目的とした。参加者に呈示する選択肢として,B-R サーティワンアイスクリーム株式会社の商品が用いられた。参加者は,サーティワンアイスに対する好意度と購入頻度を回答した後に,12種類ないし4種類の選択肢を逐次呈示された。その後に,欲しい選択肢の1位から3位までの順位付けを行い,順位付けに対する満足度と後悔度を6段階で評価した。実験の結果,選択肢にサーティワンの定番を含む条件では,店舗での購入経験の少ない参加者のみに選択のオーバーロード現象が生じた。バニラやチョコレートなどの一般的なアイスの定番を含む条件ではオーバーロード現象は生起せず,定番なし条件では高頻度での購入経験を持つ参加者においてより大きな効果が生じる結果となった。
  • 山本 晃輔, 槙 洋一, 瀧川 真也, 清水 寛之
    セッションID: O-17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    個人が過去に経験した出来事に関する記憶の総体は自伝的記憶と呼ばれ,その構造やメカニズムの解明を目指し,これまで多くの研究が行われてきた。近年,Boyacioglu & Akfirat (2015)は,従来の複数の質問紙を統合し,新たに自伝的記憶特性質問紙(Autobiographical Memory Characteristics Questionnaire, 以下AMCQ)を開発し,これまで山本他(2021)はその日本語版について検討してきた。本研究ではAMCQ日本語版の妥当性を検討することを目的とした。一般成人734名を対象にオンライン調査を実施し,自己定義記憶についての想起を求めたうえでAMCQ日本語版,SNS(Southampton Nostalgia Scale)日本語版,日本版ZTPI(Zimbardo Time Perspective Inventory)への回答を求めた。得られたデータについて相関分析を行った結果,AMCQの各因子とSNS,AMCQの各因子とZTPIの各因子との間に複数の有意な相関係数が確認された。これらの結果から,AMCQ日本語版の一定程度の妥当性が示唆された。
  • 蘇 心寧, 緑川 晶
    セッションID: O-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,エピソード的未来思考において,ポジティブな内容の検索によってネガティブな内容の検索誘導性忘却が生じるか,及び抑うつの有無によってネガティブなエピソード的未来思考の忘却に差が生じるか否かを検討した。その結果,非抑うつ群のみネガティブな内容の忘却が生起することが明らかとなった。この結果によれば,自伝的記憶と同様にエピソード的未来思考においてもポジティブな検索がネガティブな内容の抑制が生じる可能性,及び抑うつがネガティブなエピソード的未来思考の忘却を妨害する可能性が示された。
  • 西山 慧, 中山 真孝
    セッションID: O-19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    系列位置効果は有名な記憶現象であるが,実験室外での検討はほとんどない。本研究は14日間の日誌調査とその直後(15日目)に実施された事後調査によって日々のエピソード記憶における系列位置効果を検討した。日誌調査で調査協力者は毎日,その日にあった「いいこと」について自由記述を行った(記憶符号化)。事後調査では,日誌調査日程の前半後半それぞれから無作為に選ばれた日にあった「いいこと」について自由記述を行った(記憶検索)。符号化時と検索時の記述内容の類似度を記憶の正確さと想定し、深層学習技術による定量化を行った。訓練済み深層学習言語モデルであるRoBERTaを用いて,それぞれの記述内容をベクトル化し,それらの相関係数(のZ変換値)を類似度/正確さの指標とした。回帰分析により、符号化日が検索日に近いほど、記憶が正確であるという結果が得られた。このことは,日常のエピソード記憶での新近性効果を示す。
  • コロナ禍の2時点大規模調査に基づく検討
    楠見 孝
    セッションID: O-20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,なつかしさのポジティブな機能が,幸福感に及ぼす影響を,コロナ禍における2時点の大規模調査に基づいて検討することである.なつかしさには,自己の連続性,他者との結びつき,人生の意味を気づかせるなどの心理的機能がある(e.g., Sedikides, et.al., 2015).これらのなつかしさの機能の自己評定が1年後の幸福感やコロナ前へのなつかしさに及ぼす影響を明らかにする.そこで,全国の16-90 歳の男女が1回目(2021年3月中旬)1497名,2回目(2022年3月下旬)942名が回答した.重回帰分析の結果,2回目の人生満足度や協調的幸福感は,1回目のなつかしさの機能(社会的結びつきや人生の意味)で予測できることが分かった.また,コロナ前へのなつかしさは,コロナの感染不安や社会への不安となつかしさの社会的結びつきの機能によって予測できた.
  • Object familiarity and autistic traits
    Mingze Zhang, Akira Hasegawa, Takao Fukui
    セッションID: O-21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    The aim of this study was to investigate whether short-term chopsticks usage affects kinematics of subsequent reach-to-grasp movements in Japanese participants and whether this effect is modulated by autistic traits. Right-handed participants participated in three sequential sessions: first hand-grasping (PRE), chopstick action (CHP), and second hand-grasping (POST). Two objects were tested: familiar (mockups of sushi) and non-familiar (gray object with the same shape as these mockups) objects. Before the experiment, the participants were also required to answer the Autism Spectrum Quotient (AQ) test. We found a marginally significant positive correlation between transition period from grasping end to uplift initiation and AQ scores in the non-familiar condition while no significant correlation between them in the familiar condition. This result suggests that visual familiarity contributes to improving the action for higher AQ participants.
  • Mayu YAMAGUCHI, Eriko SUGIMORI
    セッションID: O-23
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    顔は個人を識別する際に重要な役割を果たす。それにもかかわらず,顔認知は歪みやすいことが明らかにされている。本研究では,知覚する魅力や示唆性の高さが顔認知に与える影響について検討した。まず参加者に面識のない人物の顔を動画で呈示し,魅力または示唆性の高さについて評定してもらった。その後,評定した人物の未加工画像,示差性を弱めて魅力度を高めたアンチカリカチュア画像2枚,示差性を高めて魅力度を低下させたカリカチュア画像2枚を呈示し,計5枚の画像の中から評定した人物の顔画像を選択するよう求めた。その結果,参加者は対象の顔を魅力的だと評定したとき,魅力的でないと評定したときよりも魅力的な顔として認知した。また,対象の顔を示差性が高いと評定したとき,低いと評定したときよりも示差性が高い顔として認知した。これらの結果は対人印象研究や目撃証言研究の観点から議論された。
  • Chifumi SAKATA, Yoshiyuki UEDA, Yusuke MORIGUCHI
    セッションID: O-24
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    他者と一緒に行為を起こす際、私たちの外界の認知は変化する。これを検討した研究では、二人が同時に同じ物体に注意を向ける状況に注目し、他者の行為に関連する物体が記憶されることを示した。一方で、二人が同じ物体に注意を向ける必然性のない状況において、他者の存在や行為がどの程度認知を変化させるのかは不明な点が多い。これを検討するため、本研究では二人一組の参加者が探索画面の中からそれぞれ異なる標的刺激を繰り返し探索した。その後、参加者が繰り返された探索画面の中から他者の標的だった物体を探索したところ、探索の促進は見られなかった(実験1)。しかし、標的刺激の偶発再認課題を行ったところ、他者の標的刺激の再認成績は単に繰り返し呈示された妨害刺激よりも高かった(実験2)。これらは、別々のものを探索していても他者の行為に関連する物体は注意を引き、その結果として二者間の記憶が似通る可能性を示唆する。
  • Songqi HAN
    セッションID: O-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    認知におけることばの役割は、長い間心理学者や哲学者たちの間で議論されている重要なテーマである。ゲシュタルト学派を代表するケーラーとコフカは、この問題について、場の理論を通じて独特な解答を提示した。ゲシュタルト心理学の場の理論、すなわち行動場の理論は、行動主体と行動環境との二元対立を突破し、行動を説明する新たな方法となる。しかし、感覚与件とは違い、ことばは、行動場の重要な構成分と一般的に見なされている感覚場に現れていない。人間の行動場は、感覚場だけでなく、言語場によっても構成されている。本研究は、言語場が如何にして認知と行動に影響を与えているかについて論じたい。言語場の理論を通じて、コフカの意志論が主張する人間の「有限な自由」の意味を明らかにする。人間には自主的な行動があるが、人間が場の支配から解放されたとは言えないことが分かる。
ポスター
  • 善本 悠介, 永井 聖剛
    セッションID: P1-A01
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    将棋に熟達者の中には、将棋盤の様子を頭の中にイメージし、 その局面についての判断に利用できる人がいる。このような将棋盤の視覚イメージは、将棋を指す人の間で、「脳内将棋盤」と呼ばれる。将棋やチェスといったボードゲームにおいて、局面の記憶や、次の一手の決定に関する熟達については研究が行われてきたが、視覚イメージの利用に関する研究は十分に行われていない。 そこで、本研究では脳内将棋盤がどのように体験されているのか、また、その見え方に個人差はあるのかを明らかにするため、インタビュー調査を実施した。調査の結果、熟達するほどイメージできる範囲は広く、より先の局面までイメージできる傾向がみられた。一方、色の有無、駒の種類の表現などは、熟達と関連がみられなかった。これにより、脳内将棋盤の見えについて、熟達レベルと関連がある側面と関連しない側面が存在すること、脳内将棋盤の表現は多様であることが示唆された。
  • 王 馨怡, 梅田 聡
    セッションID: P1-A02
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    エピソード的未来思考(EFT)における曖昧なイメージの想像は,必要な備えを怠るといった問題につながる.先延ばしという,達成すべき課題を自発的に遅らせてしまう非合理的な行動はEFTの曖昧さに関係している可能性がある.本研究では,先延ばしとEFTの関連を検討することを目的とした.参加者は未来の個人的な出来事を想像して記述し,その内容の詳細さを第三者評価によって得点化した.その後,参加者は実験者が依頼した課題と報酬課題に自由に取り組み,先延ばし行動を記録した.最後に,日常に関するGeneral Procrastination Scaleおよび自作質問紙に回答させた.その結果,EFTの曖昧さ,特に五感及び内部知覚情報の曖昧さと先延ばし傾向に相関が認められた.加えて,質問紙の因子分析の結果,個人の実行能力が最も先延ばしに影響しており,未来の感覚知覚情報のイメージの曖昧さは,今行動するか否かの実行能力への影響を通して,先延ばし行動に関連することが示唆された.
  • 櫻木 麻衣, 梅田 聡
    セッションID: P1-A03
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    現在遂行中の行為とは無関係な事柄へと思考がさまよう現象をマインドワンダリング (mind wandering, 以下, MW)という。本研究では,契機が不明で無意図的なMWの生起に対して,内受容感覚が与える影響について検討した。参加者は,心拍検出課題(Schandry, 1981)とVigilance Taskの2つの課題をおこなった。心拍検出課題の成績によって,参加者を内受容感覚高群・低群に分けた。Vigilance Taskの後半ブロックにおいて,参加者の前腕部に振動刺激を閾下呈示することで,心拍変化を誘導した。その結果,内受容感覚高群は,低群と比較すると,振動が呈示されたブロックにおいて,発生したMWがその後の試行においても継続する確率が高かった。この結果は,内受容感覚が正確な人においては,振動の閾下呈示による断続的な内受容情報の変化が, MWの発生・継続を誘発する可能性を示唆している。
  • 白石 紗衣, 齋藤 岳人, 樋口 大樹, 井上 和哉, 小林 哲生
    セッションID: P1-A04
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    周囲長複雑度は文字の周囲長と面積から算出される指標であり、仮名文字の主観的複雑度と関連することが示されてきた。本研究では、周囲長複雑度が漢字の主観的複雑度を表す指標としても妥当かを検討した。日本語母語話者と英語母語話者に対し、仮名文字と漢字の主観的複雑度を7件法で回答させ、両話者の文字ごとの平均を求めた。漢字と仮名文字ごとに主観的複雑度と周囲長複雑度との相関係数を算出した結果、日本語及び英語話者ともに高い正の相関が認められ、周囲長複雑度は仮名文字と漢字の主観的複雑度を表す指標として有効であることが示された。さらに、主観的複雑度と画数及び周囲長複雑度との相関係数を比較した結果、漢字の場合は両者に有意な差が見られなかったものの、仮名文字の場合は画数よりも周囲長複雑度との相関が高い傾向が認められた。以上のことから、周囲長複雑度は様々な文字に適用可能な複雑度の指標であることが示された。
  • 櫃割 仁平, 野村 理朗
    セッションID: P1-A05
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    これまでに俳句の美的鑑賞過程に着眼し、曖昧性を認知的曖昧性と感情的曖昧性に分類し、美との関連を検討した。その結果、認知的曖昧性と感情的曖昧性はそれぞれ違った仕方で俳句の美を説明することが明らかとなった一方、曖昧性を細分化する必要が生じた。本研究は、認知的・感情的曖昧性という2つの因子を細分化し、俳句鑑賞中に喚起される曖昧性因子をより精緻に同定することを目指した。まず、俳句の準熟達者50名に自由記述及びインタビュー調査を行い、KJ法による分類を経て、8因子が示唆された。その後、60名の参加者に8つの曖昧性の観点から俳句10句を評価してもらい、因子分析を行った結果、最終的に情景の曖昧性、関連の曖昧性、解釈の曖昧性、感情の曖昧性の4因子が同定された。それらは互いに中程度の正の相関を示し、類似するものの違った概念であり、解釈の曖昧性以外の3因子は俳句の美と負の相関を示すことが明らかとなった。
  • 陳 韻雅, 川島 朋也, 篠原 一光
    セッションID: P1-A06
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    本実験では、日本語テキストの色分けが読者の読むパフォーマンスにどのように影響するかを調べた。40人の参加者が、毎回異なる色分けで呈示されるテキストを5回、声に出して読むように指示され、声は録音された。読みやすさは毎回読み終わるたびに読みやすさスケールで測定された。実験の結果、色分けは理解度に影響しないが、テキストが文節または単語で色分けられている場合は読む速度が速くなり、単語内で色の変化が発生すると遅くなることが示された。さらに、文節または単語による色分けの利点にもかかわらず、参加者はモノトーン文章を最も読みやすいものとして評価した。この実験の結果は、文節または単語による色分けで日本語文章の読みやすさを改善できる可能性があることを示唆する。
  • 鎌尾 美彩子, 橋本 忠行, 川人 潤子, 岡崎 聡
    セッションID: P1-A07
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    繰り返し考え込むことは,抑うつを増加させると知られている。本研究はマインドワンダリングの繰り返し性を調査し,抑うつ傾向との関連を検討した。調査対象者に日常生活の主な場面を4つ提示し,それぞれの場面で生起するマインドワンダリングの具体的な内容を記述式で回答するよう求めた。また,同対象者の抑うつ傾向もアンケートにより測定した。大学生・専門学校生92名を分析した結果,場面間の内容の繰り返し性と抑うつ傾向との間に有意傾向の正の相関が見られた。さらに抑うつ傾向の各質問項目との相関を分析した結果、「不安を感じる」項目との間に有意な正の相関がみられた。この結果は,場面が異なっても同じ内容のマインドワンダリングが生起する傾向が抑うつ傾向の高さと関連し,その中でも特に軽度の抑うつ気分と関連する可能性を示唆している。
  • 平田 正吾, 池田 春花
    セッションID: P1-A08
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    タスクスイッチング(活動や課題の切り替え)における内言、すなわち実際の発話を伴わない内的な言語活動の役割について検討した。定型成人13名に対して、2桁の数字を用いた計算によるタスクスイッチング課題を実施した。加算や減算のような同一の処理のみを行う場合と、加算と減算を交互に行い、活動の切り替えを求めた場合の成績を分析した。また、課題で行うべき処理(加算や減算)を示す手がかりの有無が、課題の成績に及ぼす効果について分析した。更に、対象者の主観的な内言の使用頻度を質問紙により評価すると共に、聴覚的短期記憶の容量についても評価を行い、タスクスイッチング課題の成績との関係を分析した。測定の結果、対象者における内言の使用頻度の個人差は、タスクスイッチング課題の成績と強く関連していなかった。また、対象者の記憶容量に応じて、タスクスイッチングにおける手がかりの効果が異なることが明らかとなった。
  • 品川 和志, 石川 直樹, 平山 絢菜, 梅田 聡
    セッションID: P1-A09
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    不安傾向の高い個人において,あいまいな状況下で,与えられた情報による信念更新傾向が変化することが知られている。しかし,そのような変化が,情報評価におけるどのような側面に起因するかについては明らかでない。この点について,ビーズ課題を用いて得られたデータに,ベイズ更新を適用することで検討した。ビーズ課題では 2色のビーズが異なる割合で入った2つのビンを呈示し,ビーズが呈示されるたび,どちらのビンから取り出されているか,主観的確信度を回答させた。解析では,現在の確信度は,一つ前の時点での確信度に,現在得られたビーズの情報を加味して得られると仮定したうえで,個人ごとに,一つ前の確信度,および現在の情報のどちらを重視する傾向が高いのかを推定した。この傾向と質問紙により得られた不安傾向の関連を検討した結果,不安傾向が高いほど,現在のビーズから得られる情報を低く評価する傾向が示された。
  • 佐伯 恵里奈
    セッションID: P1-A10
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、課題を示す言語ラベルとタスクセットの結びつきを操作し、タスクセットが競合する場面での反応選択に言語ラベルが及ぼす影響について検討した。課題セット群では、奇数偶数判断と大小判断に異なる反応セットが用いられ、手掛かりに応じてどちらかの判断課題を遂行した。反応セット群では、行うべき判断は奇数判断か偶数判断のいずれひとつで変更はなかったが、2つの反応セットが教示され、手掛かりに応じてどちらかの反応セットを用いて遂行した。
    実験の結果、反応セット群と比較して、課題セット群は前の試行と同じセットを繰り返すことによる反応時間の促進が大きい傾向があり、この傾向は準備間隔の長さに関わらず認められた。このことから、「奇数偶数」「大小」といった言語ラベルが使用しにくい反応セット群では、反応セットを繰り返す場合でも競合する反応セットからの影響が受けやすいことが示唆された。
  • 和田 一成
    セッションID: P1-A11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    解決が困難と感じたときの行動特性を把握するために、洞察問題を複数回答させる実験を行った。本実験は、予備的な実験である。
    3種類の洞察問題(9点問題、10コイン問題、5つの四角形問題)と1種類の両定義問題(ハノイの塔問題)を用意し、15名の実験参加者に実施した。各問題はPCを使って提示し、反応を記録した。また、レコーダーにPCの画面部分のみを記録した。問題の実施順はランダムとし、時間制限は設けなかったが、回答が長時間に及んだ場合は実験者が声をかけ、これ以上回答する意思がない場合は回答中止とした。最後に課題の主観的難易度などを回答させ、また、各問題の感想などを聞いて実験を終了した。
    結果の分析に際して、それぞれの問題を実験前に知っていた場合は分析対象から除外した。また、プログラム不良などのケースも除外した。その結果、各問題のケース数が10未満になり、また、本研究では回答過程の詳細分析が必要なため、特徴的な回答を事例分析的に分析することとした。まず、正答率を分析したところ、9点問題50%、10コイン問題100%、5つの四角形問題20%、ハノイの塔問題100%となり、比較的正答率の低い問題と高い問題に分かれた。この中から、9点問題で最後まで回答できなかったケースを詳細に見たところ、ほとんどの時間帯で9つの点の枠の外には出ておらず、枠への固着が見られた。そのほか、ケースごとに詳細分析を行った。
  • 眞嶋 良全
    セッションID: P1-A12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,矛盾する陰謀論の同時保持と分析的思考の関連性について検討した。先行研究では,核となる陰謀論(権力による情報隠蔽)を統制することによって,互いに矛盾する陰謀論同士の関連性は消失することが指摘されているが,我々の先行研究 (眞嶋他, 2021) では,核となる陰謀論の影響を統制しても,両者の関連性は残ることが示されている。そこで,本研究では,矛盾する信念の同時保持に,分析的思考傾向の低さが関連する可能性を検討することを目的とした調査を行った。199名が参加した調査の結果,矛盾する陰謀論の同時保持傾向と分析的思考の間に負の相関が見られたものの,核となる陰謀論信念を統制した後では,同時保持と分析的思考の間の偏相関係数は有意ではなかった。分析的思考が必ずしも非合理な信念を抑制するわけではないという結果は,信念の背後に動機づけられた推論があるとする知見と整合すると言える。
  • 向居 暁, 桑田 雪加
    セッションID: P1-A13
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    占いを信じたり,おまじないを利用することは,不思議現象信奉や実証的根拠を欠く信念の一種として研究されている。本研究は,占いやおまじない信奉を多面的に捉え,それらに興味を抱いたり,それらを信じたり,生活に取り入れることなどと個人の情報処理や制御焦点のスタイルとの関連性を検討した。その結果,占い・おまじない信奉に係る諸側面によって,情報処理や制御焦点のスタイルが異なった影響を及ぼすことが明らかになった。情報処理スタイルに関しては,先行研究と同様に,直感性の影響が大きいことが示されたと同時に,合理性の低さが影響する側面(例:占い・おまじないを実行すること)も見受けられた。また,制御焦点に関しては,利得接近志向が,占いやおまじないが当たると信じることやお祓い・お参りなどの宗教的行動を実行することに,そして,損失回避志向が,占いやおまじないに興味を抱き,それらを実行することに関与することが示された。
  • 荷運び労働者「棒棒」を対象とした検討
    朱 思斉, 佐々木 恭志郎, 姜 月, 錢 琨, 山田 祐樹
    セッションID: P1-A14
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    ポジティブな感情とネガティブな感情は,それぞれ上と下の空間との連合を形成している(空間感情メタファ)。先行研究では,この関連性が22の言語で観察されることが示されている。我々は,WEIRD以外の民族における文化や習慣などの関連要因を探索するため,少数民族を対象としたフィールド調査を実施した。その結果,ヤオ族は他の民族とは異なる結果を示し,彼らの生活環境や特殊な荷物運搬方法などが影響している可能性が示唆された。本研究では,これらの影響を検証するために,生活環境や荷物の運び方がヤオ族と類似する重慶の棒棒を対象とした実験を行った。単語配置課題により,棒棒ではヤオ族と同様に空間感情メタファ効果が観察されなかった。これらの結果は,重荷の運搬方法や坂の多い環境が空間感情メタファの形成に重要な役割を果たすという我々の仮説を支持するものであった。
  • 田中 優希菜, 服部 雅史
    セッションID: P1-A15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    物語などを読むと気分の変化が起こることはよく知られている。しかし,物語読解による気分変化に関する実験結果は一貫していないことから,この効果は様々な個人差要因によって調整されうると考えた。そこで本研究では,物語読解による気分変化に対する個人差要因について,個人特性や読書への嗜好を測定する5つの指標を用いて探索的に検討した。読解前後の感情状態尺度の値について階層クラスタ分析を行った結果,「ネガティブ解消」「おだやかさ向上」「気分変化微少」の3つのクラスタが見いだされた。クラスタごとに読書に関する特性や読解時の状態を比較したところ,物語に入り込む状態を測る日本語版移入尺度(小山内, 2016)で有意差が見られた。参加者の特性や読書の嗜好も一部有意傾向であった。本研究の結果から,個人差要因が気分変化の調整変数であることが明らかになったが,さらに,読解中の状態をより詳細に検討する必要性も示唆された。
  • 河原 哲雄
    セッションID: P1-A17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    健常な大学生を対象に,アイオワギャンブル課題を実施し,不確実な状況における選択反応の学習データを,強化学習の階層ベイズ計算論モデル(Outcome-Representation Learning, ORLモデル)にフィッティングし,モデルの個人別パラメータ,獲得額と損失額の分布特性が異なる4つのデッキの選択回数,およびエフォートフル・コントロール尺度日本語版の下位尺度得点の三者の間の相関分析を行った。強化学習パラメータとデッキの選択回数の関連では,すべてのデッキで有意に相関するパラメータが見いだされた。強化学習パラメータとエフォートフル・コントロールの関連では,結果頻度および固執の荷重に関連するパラメータと注意の制御に関連する下位尺度得点の間に有意な相関が見られた。
  • 中村 紘子
    セッションID: P1-A18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    動機づけられた推論とは,個人の目標や動機が推論に影響することであり,一例として,政治的立場により気候変動に関する情報の評価が異なることが挙げられる (Druckman & McGrath., 2019)。熟慮性が高い者は目標と合致するように情報を処理できるため,動機づけられた推論がより強いことが示されている (Kahan, 2013)。一方,動機づけられた推論として報告されている現象は,事前信念による信念バイアスの一種だという指摘もある (Tappin et al., 2021)。本研究では,宗教に関わる情報を評価する際に,動機づけられた推論が生じるか,および,思考スタイルによって動機づけられた推論の程度が異なるかを,宗教性と事前信念との関係から検討した。その結果,宗教に関する情報の信頼性の評価は事前信念により異なることが示されたが,宗教性や思考スタイルによる影響は見られなかった。
  • -刺激の命名難度が与える影響-
    三橋 翔太, 平田 正吾, 奥住 秀之
    セッションID: P1-A19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,刺激の命名難度の影響を取り上げることから,定型小児のシフティングにおける自発的な言語方略の役割を検討することを目的とした。3-5歳の小児36名に対して、幼児期のシフティングを評価するDimensional Change Card Sort課題を命名の容易な色刺激と形刺激のみを用いた命名可能条件と、命名が困難な刺激のみを用いた命名困難条件の2条件で実施した。対象児は、まず色または形に基づいて刺激カードを分類するように求められた(プレスイッチ)。その後、分類基準が変更され、先とは異なる基準で刺激カードを分類するよう求められた(ポストスイッチ)。測定の結果、ポストスイッチにおける正分類数に、条件間で有意差は認められなかった。しかし、誤反応の分析を行ったところ、命名困難条件の遂行様相は命名可能条件と異なっていた。以上の結果に基づき、シフティングにおける言語的概念の役割について考察した。
  • ―オンラインコミュニケーションに焦点をあてて―
    黒星 きらら
    セッションID: P1-A20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    近年コロナウイルスの影響で「同調」という言葉がよく使われるようになったが、これが文化的背景によるものかは未だ議論中である。本研究では、このような状況下で普及したオンラインコミュニケーションツールの特徴である、グループ成員の顔の見える範囲が比較的狭いことを考慮した上で、他者表情が議論中の意思決定(同調的意見変容)に与える影響について検討した。同時に、文化的自己観の違いがこの効果を決定するかも検討した。実験に際し、該当ツールを模した動画を作成した。動画は、意見を述べる発言者と表情が賛成、または反対へと変化する他者とで構成されていた。動画視聴後、参加者は、発言者の意見に賛成か反対かの質問紙と、相互独立―相互協調的自己観尺度の質問紙に回答した。その結果、周辺他者表情が議論中の意思決定に影響を与えるという仮説、および相互協調的自己観傾向の高い人ほど他者表情に影響を受けやすいという仮説が支持された。
  • Iou-shiuan Chou, Yasunori Morishima
    セッションID: P1-A21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    コロケーションとは、二つ以上の単語が慣用的に組み合わされた表現で、文法などに基づくものでないため、一つの言語におけるコロケーションの使い方が、それを他の言語に訳した場合に必ずしも自然な表現になるとは限らない。本研究では、英語コロケーション判断課題を用いて、第二言語(L2)のコロケーション処理における第一言語(L1)の影響を検証した。英語を母語(L1)とする参加者と中・上級英語学習者(L2)の参加者は、3種類の英語コロケーション(英語ベースvs 日本語オンリーvs ランダムな組み合わせ) からなる75個のコロケーション・フレーズに対して、英語コロケーションとしてどれだけ自然かを8件法で評価した。結果、日本語オンリー・フレーズの評価値は、L1参加者よりL2参加者の方が有意に高かった。この結果から、L2話者において、L1(日本語)のコロケーションに関する知識がL2(英語)コロケーションの判断に影響を及ぼすことが示唆された。
  • ―小学生と成人データの比較―
    宮崎 由樹, 鎌谷 美希, 須田 朋和, 若杉 慶, 松長 芳織, 河原 純一郎
    セッションID: P1-B01
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    マスク着用は感染症拡大防止に有効だが,その着用で表情が読みとりづらくなる。こうしたマイナス面の報告は,成人被験者を対象とした実証研究の知見に依拠しており,学童期の子どもを対象とした知見は極めて少ない。本研究では,マスクなし,不織布マスク,あるいは透明マスクを着用した顔表情画像を小学生に提示し表情弁別を求めた。そして成人の既データと比較した。実験の結果,成人では,マスクなし顔に比べて,不織布マスク着用顔において「喜び」「無表情」「悲しみ」の弁別パフォーマンスの低下が認められた。対して小学生では,「嫌悪」「恐怖」「喜び」「無表情」「悲しみ」「驚き」とより多くの表情でその低下が認められた。なお,このような低下は,透明マスク着用顔では総じて認められなかった。本研究の結果は,不織布マスク着用による顔表情認知の妨害は小学生でより大きい可能性,その対処として透明マスクの活用可能性を示している。
  • 市村 風花, 宮崎 由樹, 河原 純一郎
    セッションID: P1-B02
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    COVID-19流行は,マスク装着顔の研究を推進した。マスクの装着によって顔の魅力は高まると予測するモデル(増幅モデルOrghian & Hidalgo, 2020)と,これに反する平準化モデル(Miyazaki & Kawahara, 2016)がある。本研究は自由選択課題を用いてこれらのモデルを検証した。参加者は,伏せた顔写真カード二山から一方を選び1枚ずつめくった。実験1では高魅力の素顔男性写真のみを含む山と,同マスク装着顔男性のみを含む山を設けた。もしマスク装着が顔魅力を高めるならば,マスク装着顔のみの山が報酬となり選択的にめくられると予測される。実験の結果,増幅モデルには反して,女性参加者は素顔の山を選択しやすかった。一方,男性参加者はそうした傾向を示さなかった。実験2では高魅力の素顔女性顔カードと同マスク装着顔カードの二山を設けたところ,実験1に一致して男性参加者のみが素顔の山を選択した。これらの結果はマスク装着による増幅モデルよりも平準化モデルを支持した。(397字)
  • 池田 慎之介
    セッションID: P1-B04
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    COVID-19の影響によりマスクを付ける機会が増加しているが,マスクを付けた表情からの感情推測の正確さの個人差についての検討はまだ不足している。本研究では,日本人(n = 123)を対象として,社交不安と社会的感受性がマスクを装着した表情からの感情認識の正確さに及ぼす影響について検討した。その結果,日本人においてはマスクを装着すると悲しみと恐れの感情が読み取りづらくなる一方で,喜び表情は影響を受けず,怒り表情の読み取りはむしろ正確になることが示された。また,マスクを付けていない表情からの感情推測が得意であると,マスクを付けた表情からも正確に感情を読み取ることができるが,そうした関係とは独立して,社会的感受性の高さがマスクを付けた表情からの感情推測の正確さを予測していた。本研究の結果から,マスクを付けた表情からの感情推測は文化によって異なる可能性,そして微妙な手がかりから他者の複雑な心的状態を推測できる人はマスクの影響を受けづらい可能性が示唆された。
  • 嵯峨崎 天音, 向井 香瑛, 渡邊 克巳
    セッションID: P1-B05
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、動画刺激の再生方向が表情認知に与える影響の検討を行った。他者から話しかけて欲しそうにしている表情、もしくは他者から話しかけて欲しくなさそうにしている表情をしている人物の動画を10秒間撮影した。それらの動画を元に、3種類の動画刺激(正再生条件、逆再生条件、ランダム再生条件)を作成した。実験参加者はそれぞれの条件の動画刺激を観察し、動画に映っている人物が「他者から話しかけて欲しそうか」、あるいは「話しかけて欲しくなさそうか」を判断した。正再生、逆再生、ランダム再生の条件の正答率を分析することで、刺激の再生方向が表情認知に与える影響の検討を行った。
  • 向井 香瑛, 仲里 謙佑, 渡邊 克巳
    セッションID: P1-B06
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、ヒトが他者の表情から「美味しいと感じている」かを読み取れるかどうかについて調査することを目的に行われた。はじめに、表情刺激を作成するため、大学生6名を対象に、飲料を飲んだ後の表情を5秒間撮影した。このとき、飲料の味(2条件:美味しい、まずい)と表出する表情(2条件:美味しい、まずい)の4つの組み合わせを設定した。次に、33名の大学生が撮影された表情動画に対して、「動画の中の人物が飲んだ飲料をどの程度美味しいと感じているか」の評価を行った。その結果、まずい飲料×まずい表情の動画よりも、美味しい飲料×まずい表情の動画の方が「まずいと感じている」と評価する傾向にあることが示された。美味しい表情の評価は、飲料の味による差は見られなかった。これらの結果から、ヒトは他者の表情から「美味しいと感じている」かを読み取るとき、飲料の味によって判断が異なる可能性が示唆された。
  • 山内 裕斗, 安藤 美華代
    セッションID: P1-B07
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/24
    会議録・要旨集 フリー
feedback
Top