抄録
大自然の絶景や芸術作品など,広大かつ既存のスキーマを超越する刺激に対する「畏敬の念」と呼ばれる感情反応がある.本研究では,二つのオンライン実験を通して,畏敬の念が状況的興味(situational interest)を高めるのかどうかを検討した(N = 270).参加者は動画刺激を視聴した後に,動画視聴時の感情状態と動画視聴後の状況的興味を測定する自己報告型の質問項目に回答することが求められた.実験1では,大自然の絶景を空撮した動画視聴時に畏敬の念を感じていた個人ほど,動画視聴後に自然への状況的興味が高まることが示された.実験2では,実験1の結果が再現されるとともに,美術品の動画視聴時に畏敬の念を感じていた個人ほど,動画視聴後に芸術作品への状況的興味が高まることが示された.これらの結果は,動画視聴時の他の感情を統制しても再現された.本研究の結果より,畏敬の念が刺激駆動による状況的興味に重要な役割を担っている可能性が新たに示唆された.