抄録
感覚統合では,各モダリティの信頼性に基づいて知覚が決定される.ダブルフラッシュ錯覚は、時間分解能の高い聴覚が視知覚を変化させると考えられている。しかし,統合の重み付けは入力情報毎の情報信頼性に依存するのか,モダリティ毎の正確性に依存するのかは明らかになっていない.本研究では,振幅変調音の変調度を変化させることで知覚しやすさを操作し,曖昧な聴覚刺激では視覚刺激により聴知覚を変化させられるかを調べた.2回と知覚する割合が50%程度の曖昧な聴覚刺激と視覚刺激を2回提示すると,聴覚刺激を2回と知覚する割合が上昇した.一方,視覚刺激1回と,2回と知覚する割合が約80%の聴覚刺激を提示すると,視覚刺激を2回と知覚する割合は上昇した.しかし視覚刺激1回と曖昧な聴覚刺激を提示すると,視覚刺激を2回と知覚する割合は変化しなかった.従って,入力情報毎の情報信頼性に基づいて,統合の様式が決定されていることが示唆された.