抄録
英語学習への具体的な目標を持ち, 意欲的に学習に取り組む大学生英語学習者は少なくない.一方で,英語力の土台となる語彙学習に関しては,学習者により意欲や学習成果に個人差が大きいことが問題である.英語の授業で語彙指導を行なうにあたり,学習者に適した学習法を提案するためには,学習者の学習活動を制御している心理的側面を鑑みる必要がある.このような背景を踏まえ,本研究では,制御焦点理論の枠組みを援用し学習者の目標志向性について検討を試みた.調査には,語彙学習用の制御焦点尺度を作成し,大学生および大学院生446名を対象に調査を実施した.結果から,促進焦点と防止焦点の間に中程度の有意な相関が示された.また,英語力(TOEIC得点)との関連性を調べた結果,防止焦点傾向が強くなるほどTOEIC得点が低下することが示されたことから,防止焦点の強い学習者は,学習過程における学習方略など自己調整に問題があることが示唆された.