抄録
私たちは日常的な経験や情報伝達から、身長と体重、日付と気温など、変数間の関係性を学習する。しかし、人間はさまざまな認知バイアスを持っており、変数間の関係性を学ぶ際も例外ではない。Kalishら(2007)は、2つの変数の関係性を学ぶ際、人間は無意識に正の線形関係を仮定する強い帰納バイアスを持つことを示した。この知見は、2変数間の関係性に依存して、私たちの学習のしやすさに違いが存在することを示すものである。本研究では、Kalishら(2007)が使用した知識伝達課題を用いて、人間の帰納バイアスが2変数間に関係性がないことの学習に与える影響を理論的、また実験的に分析した。結果として、帰納バイアスの存在により、2変数間に関係性がないことを学習することが困難であることが明らかになった。具体的には、実際には相関が存在しない変数間に誤って正の相関を見出し、またこのような誤った認知が関係性の学習を促進することが明らかになった。