抄録
我々は見ている顔,記憶している顔に対応した視覚表象を有している。これらの視覚表象を画像として示すのは簡単ではないが,我々はclassification image(CI)を用い観察している2つの顔を区別して画像化できることを報告した(永井ら,2023,日本基礎心理学会)。本研究では,記憶顔に対しても画像化が可能かを検討した。参加者は事前に2つの顔画像(目標顔:女性顔AおよびB)を記憶し,実験では女性平均顔にランダムノイズを加算減算した顔画像を左右に対提示し,記憶した目標顔(セッション内でAまたはBに固定)に近い画像を選択させた。各試行で選択されたノイズ画像群に基づき2つの目標顔に対するCIがそれぞれ生成された。得られたCIは記憶した目標顔の特徴(目の形状,頬の膨らみなど)をうまく表現しており,実際に第三者の評価によってそれぞれのCIは目標顔に類似していることが示された。したがって,CIを利用することで記憶した顔も適切に画像化できることが確認された。