抄録
遮蔽により形態情報の不足した顔の観察時に、平均顔によって補完が生じる可能性が先行研究によって示唆されている。しかし、先行研究の実験手法には問題点があり、仮説実証には不十分であったと考えられる。本研究では、逆相関法を用いて形態情報不足顔の心的表象を直接的に推定することにより、平均顔補完仮説を検証した。逆相関法の実験は2段階から成り、第一段階 (N= 19) では、下部が遮蔽された顔の観察時に生じる顔の心的表象を反映する画像であるCI (classification image) と、そこからは離れた顔画像であるanti-CIが得られた。第二段階 (N= 24) では、CIとanti-CIの典型性 (平均顔の近さと関連する指標) を評価する課題を実施した。平均顔補完仮説が正しければ、典型性の評定値はCIのほうがanti-CIよりも高くなることが予測され、予測通りの結果が得られた。本研究では、形態情報の不足した顔の観察時に平均顔によって補完が生じることを、従来より直接的に実証できた。