長崎市からの委託により「供用不可まで劣化破損が進行したコンクリート構造物の補修・補強工法に関する研究委員会」が2015~2016年度に設置された。軍艦島は,2014年に国の史跡指定を受け,2015年に世界文化遺産の構成資産として登録されたため,委員会では,廃墟と化して残存する著しく劣化した鉄筋コンクリート造建築物群の保存方策に関して,技術的・文化財的な観点から様々な検討がなされた。特に,保存優先順位の高い3号棟,16号棟および65号南棟に対しては,具体的な補修方法,補強方法,および補修工事・補強工事の施工方法に関して具体的な検討がなされた。本稿は,それらの概要について取り纏めたものである。