2015 年 12 巻 6 号 p. 161-178
極端紫外域での太陽コロナ観測で見つかった鉄多価イオン原子過程の問題が,大型ヘリカル装置(LHD)を用いた分光実験により解明された.プラズマパラメータを制御できるLHDは,太陽コロナ診断に重要な鉄多価イオン分光データを提供している.国際熱核融合実験炉(ITER)成功の鍵を握る高温プラズマ中のタングステン多価イオン原子過程について,モデリング・実験両面から研究の進展がある.専用に開発された電子ビームイオントラップ(CoBIT)を用いて取得されたタングステン多価イオン分光データは,LHDでの複雑な発光スペクトルの分析を可能にした.基底状態の磁気双極子遷移を利用したユニークなタングステン多価イオン輸送も研究も始まっている.