抄録
粒子の波動性が顕著になる量子系では,粒子は量子統計性を持った波として振る舞い,粒子間の相互作用の影響は散乱波の対称性と位相シフトとして現れる.散乱長とは長波長極限で散乱波の位相シフトを与えるパラメータであるが,2粒子間の束縛エネルギー,量子多体系の相互作用エネルギーや熱力学量を与える重要な物理量でもある.散乱長が可変な冷却原子を用いて粒子多体系の物性を系統的に研究する事により,様々な物理系の本質を理解する事ができる.本解説では,s波散乱長で相互作用しているスピン1/2フェルミ粒子系を扱う.初めに散乱長の物理的意味を確認し,s波散乱長で記述される様々な普遍的物理法則について解説する.最後にこれまでの実験と希薄中性子物質への応用について紹介する.