2024 年 21 巻 3 号 p. R007-
宇宙における重元素の起源,特に金やプラチナ,ランタノイドなどの速い中性子捕獲反応により合成される元素の起源として,中性子星の合体現象が注目されている.中性子星が合体すると中性子過剰な放出物質中で元素合成が起き,合成された原子核の放射性崩壊によって電磁波放射「キロノバ」が引き起こされる.中性子星合体で合成された個々の元素の情報を引き出すためには,キロノバのスペクトルを理解することが必要不可欠である.本稿では,キロノバの可視光・赤外線スペクトルを理解するために必要な正確性の高い重元素の原子データの需要と,スペクトル解読における近年の進展について紹介する.