2026 年 23 巻 2 号 p. R006-
星間空間では,低温・低密度という極限環境にもかかわらず,複雑有機分子を含む多種多様な分子が発見されている.これらの分子がいつ,どのように生成されるのかを理解することは,化学物理学的な興味だけでなく,星・惑星形成過程の解明にもつながる重要な課題である.しかし,観測されている分子のうち,形成機構が明らかになっているものはごく一部に限られる.このような分子の形成過程を理解する上では,星間塵を覆う氷表面に吸着したラジカルの反応が鍵となる.しかし,ラジカルは高い反応性ゆえに存在量が極めて微量となり,従来の実験手法ではその反応過程を直接追跡することが困難であった.本稿では,極低温氷表面におけるラジカル反応を追跡するために新たに開発した高感度リアルタイム表面分析装置と,その装置を用いて行った研究について解説する.