コモンズ
Online ISSN : 2436-9187
査読論文
内発的発展論における「キー・パースン」の創造性の応答的生成過程
潜在的実在に着目した地域実践記述試論
村上 竜雄
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2026 年 2026 巻 5 号 p. 74-91

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抄録
本稿は、内発的発展論の中核的概念である「キー・パースン」の創造性をいかに記述しうるかという理論的課題に取り組み、創造性を制度的評価や個人の資質ではなく、関係のなかで生成される出来事として捉え直す「生成論的転回」を提起する試論である。 キー・パースン概念は、哲学者の市井三郎が「歴史的必然性」に抗して意志をもって参与しようとする例外的諸個人として構想したものであり、鶴見和子はこれを地域の名もなき実践者の創造性を照射する枠組みとして継承した。 地域社会実践の事例研究において、重要な役割を果たしてきた同概念であるが、その一方で、語りや制度的評価の過程において特定個人が英雄化され、創造性が顕在的成果やリーダーシップへと還元される傾向をはらんできたことは否定できない。 こうした構造的問題を批判的に検討しつつ、本稿は創造性を環境・歴史・他者との交錯のなかで立ち現れる出来事的実在として再定位し、その生成的過程を捉えるための記述方法論を提示する。理論的基盤として、アルフレッド・ノース・ホワイトヘッドの有機体の哲学、および、イザベル・ステンゲルスの応答的世界観を参照し、記述行為を出来事 の網の目に参与しつつ意味を共に生成する倫理的実践として再定位する。さらに、批判的実在論の視座を導入し、創造性を直接観察可能な現象の背後で作用する潜在的実在として捉え、アブダクションとリトロダクションによる推論過程を方法論的基盤として位置づける。 事例分析では、著者が参与する人材育成事業を事例に、構造的記述の意義と限界を明らかにしたうえで、記述者の参与を通じた応答的記述の可能性を検討する。その結果、実践者に内在する感受の契機に着目することで、創造性が倫理的応答として立ち上がり、関係的発火を媒介として共に生成される創造性の動的過程が明らかとなった。
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