コモンズ
Online ISSN : 2436-9187
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コモンズ 第4号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
査読論文
  • 先史時代土器標準化の定量的研究
    James Frances Loftus
    2025 年2025 巻4 号 p. 2-14
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/12
    ジャーナル オープンアクセス
    先史時代の社会において、土器生産は社会や文化の変化を反映し、生産体制や専門化の進展は遺物の形状に表れることが広く知られている。近年、計算・デジタル技術の進歩により、形状変化を定量的に分析することができ、先史社会における生産組織に関する新たな知見を得ることが可能となった。本研究では、幾何学的形態計測法を用いて、弥生時代初期から前期(紀元前900/800 年~紀元前300 年)の調理用土器(甕形土器)の生産変化を検討した。この時期は、農耕社会への移行、水田耕作の拡大、人口増加、社会階層の形成といった大規模な社会的変化が特徴的である。分析の結果、甕形土器の形状のばらつきが減少する傾向が確認され、生産が家庭レベルから、より専門化された小規模グループによる体系的な生産体制へと移行した可能性が示唆された。また、甕形土器と壺型土器の標準化の度合いの違いは、用途や生産率が物質文化専門化に与えた影響を明らかにしている。本研究の成果は、古代日本における人口動態や社会構造の変化が生産体制に与えた影響を明らかにするとともに、各時代や地域の生産活動を比較分析するための重要な基盤を提供するものである。
  • 与える者と受け取る者の間で
    大田 彩香
    2025 年2025 巻4 号 p. 15-31
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/12
    ジャーナル オープンアクセス
    赦しは、第二次世界大戦以降、多様な領域で論争の的となってきた概念の一つである。その代表的な論者であるジャック· デリダJacques Derrida(1930–2004)が赦しの不可能性を主張したのに対し、非商業的な交換としての「困難な赦し」を論じ、挑戦を投げかけたのがポール・リクールPaul Ricoeur(1913–2005)であった。果たしてリクールは、デリダが不可能な赦しを主張する上で否定的に論じた「贈与」をどのように再解釈し、赦しの可能性を残そうとしたのか。先行研究においても、リクールが赦し論に贈与概念を導入したことの意味や、それが彼の赦し論全体に与えている影響については、検討の余地が残されている。本論では、リクールの赦し論の中で、贈与が赦しの行為者の関係性を焦点化していることを明らかにする。彼にとって贈与とは「与えること」と「受け取ること」という交換である。 リクールは、贈与において「相互性」に着目し、行為者の「間」に着目することで、この不等価な交換を支える「感謝」の存在を重要視する。感謝は、満ち溢れの論理に基づいたアガペーの領域に位置付けられる。分析を通して、赦しを与える者と乞う者が、アガペーの領域において互いにとって相互的かつ代替不可能な「与える者」と「受け取る者」として捉えられている点に、リクールの独自性があることを明らかにする。
研究ノート
  • 永原 健大郎, 江原 慶
    2025 年2025 巻4 号 p. 32-66
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/12
    ジャーナル オープンアクセス
    Hawkins-Simon の条件とPerron-Frobenius の定理は、マルクス経済学の生産論および生産価格論の根幹をなすものである。しかし、いずれも標準的な数学の内容とは言い難く、特にHawkins-Simon 条件は経済数学の教科書以外で解説されることは稀である。 他方で、マルクス経済学の教科書や研究書では、いずれも証明済みの命題として扱われることが多い。そのために、証明のプロセスを知るには、経済数学の教科書を参照することになる。 しかし、経済数学の教科書の内容は、多くの経済学徒にとってかなり難解で、分量も多い。しかも、Hawkins-Simon の条件の性質とPerron-Frobenius の定理の証明だけをフォローしたくても、結局通読を必要とするケースが多い。 そのため、Hawkins-Simon の条件とPerron-Frobenius の定理は、そのマルクス経済学にとっての重要度は高いにもかかわらず、学習しにくい内容になっている。そこで本稿では、大学教養レベルの、ごく初歩的な線形代数の知識のみを前提として、Hawkins-Simon の条件とPerron-Frobenius の定理を解説・証明する。 マルクス経済学の生産論・生産価格論において、最も基本的なレベルに属する部分だけに内容を絞ることで、分量を抑えてある。証明プロセスのベースは、経済学分野でもよく参照される二階堂副包『経済のための線型数学』(培風館、1961 年)であるが、説明が省略されている箇所を補い、また用語も今のものにアップデートしている。 第1 節(永原担当)では、数学的議論が展開される。ここが上で述べた本稿の主要な貢献部分である。 第2 節(江原担当)では、すでに広く知られていることであるが、Hawkins-Simon の条件とPerron-Frobenius の定理の経済学的意味を述べ、第1 節の貢献をマルクス経済学の研究の観点から補強する。さらに、2 部門の一般的なケースで、Hawkins-Simon の条件の経済学的性質の解説、「マルクスの基本定理」およびPerron-Frobenius の定理の証明を与える。これによって、高校数学「数学I」までの範囲で、Hawkins-Simon の条件とPerron-Frobenius の定理の経済学的エッセンスはフォローできる。
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