主催: 日本船舶海洋工学会
会議名: 令和6年 日本船舶海洋工学会 秋季講演会
回次: 39
開催地: Yokohama City Port Opening Memorial Hall
開催日: 2024/11/21 - 2024/11/22
p. 91-99
船舶用オートパイロットをモデルベースで設計する際,船体モデルのパラメータは必須である。船体パラメータの精度が良くなければ,その性能は劣化し最悪の場合ヨーイングを発生する。
船体の運動状態から船体パラメータを同定する手法では,数多くの方法が提案されている。だが,得られた同定値には,モデル化誤差や外乱成分の影響を受けてパラメータ誤差が含まれる。その誤差を低減するために平均化処理や最小二乗法(LSM)などが利用される。そのため,船体パラメータの同定システムには,同定算法に加えて更新算法も必要となる。
・同定算法では,船体運動から船体パラメータの同定値を推定する。
・更新算法では,その同定値から更新値を推定する。更新値は制御システムのノミナル値になる。
本稿では,更新算法に関する手法を提案する。
著者らは特許文献(特開2020-032902)において,船体パラメータの回帰式を船速に対するLSMによって特性付けていた。しかしながら,次のような課題がある。
1.同定値のデータをそのまま利用していた。
同定値には外乱の影響が含まれるため,その影響を考慮しないと適切な計算ができない。
2.そのデータに含まれる船速の範囲において,狭い場合では計算精度が劣化する。
速度データが固まっている場合に相当し,そのまま回帰式を求めると誤差が生じる場合がある。
3.回帰式から外れ値を除去していた。LSMは外れ値の有無に強く影響を受ける。
回帰式は外れ値の除去を含めて計算しないと,推定値に誤差が生じる。したがって,従来例では回帰式の精度が十分に保証できず,制御システムは適切でない更新値を用いることになる。
本提案手法では,回帰式に統計技法を応用することによって,課題の解決を図る。下記の番号は上記課題番号に対応する。
1.同定データに含まれる評価量を同定値の分散として扱い,それを重みに変換する。
回帰式を同定値と重みとから計算することで,外乱の影響を考慮できる。
2.船速の範囲を狭い場合と広い場合に分けて,回帰式の次数をそれぞれ
(a)狭い場合では0次(傾斜ゼロと切片,一定)にすることで,誤差の発生が防げる。
(b)広い場合では1次(傾斜と切片)にすることで,適切な回帰式が得られる。
3.回帰式では外れ値の除去を含めて計算することで,回帰係数の推定精度を落とさずに求められる。
外れ値除去はフィルター機能をもつ重みに変換して,分散の重みに乗法する。