主催: 日本船舶海洋工学会
会議名: 令和7年 日本船舶海洋工学会 春季講演会
回次: 40
開催地: Ehime Prefectural Convention Hall
開催日: 2025/05/29 - 2025/05/30
p. 173-182
現在の三重県伊勢市大湊に存在した元禄15年(1702)創業の市川造船所が,明治11年(1878)に建造した日本初の国産洋式帆装貨物船の一隻とされている松阪丸について,その建造と歴代船主について調査した.
建造の原動力建造の原動力は,当時の不況や社会情勢の激変による当時の造船所の苦境と,開国によって始まった地域の大々的な製茶の輸出による洋式船のニーズが相まったものであったことが判明した.
また,松阪丸建造に当たって洋式木造船建造の経験がない大湊に兵庫から招聘された船工が,後に神戸にて造船所を経営したこと,市川造船資料に残された,松阪丸用の建造用ハーフモデルについて,欧米のように建造時に寸法を変更させて建造したことを示した.建造用ハーフモデルは日本ではほとんど使用されなかったので,本モデルは大変貴重なものである.
最後に,歴代の船主について調査し,沿岸用貨物船として建造された松阪丸が,日本の南洋進出の動きの中で,一時期ではあるがはるか南洋諸島への数度の航海を行っていたことを確認した.
松阪丸の長い履歴は明治という時代の一断面を示している.