日本調理科学会誌
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中鎖脂肪 (MCT) および長鎖脂肪 (LCT) を使用した焼き菓子の物性と内部組織構造
花﨑 憲子上中 登紀子大喜多 祥子倉賀野 妙子和田 淑子
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2011 年 44 巻 3 号 p. 206-213

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抄録
MCTを用いたビスケットとLCTを用いたビスケット間で,生地と焼成品の物性,焼成中の形状の変化,および,電子顕微鏡による組織構造を比較した。MCTはLCTに比べ粘度が低いにも関わらず,MCTビスケット生地は最大圧縮応力と最大圧縮エネルギーが大であった。焼成初期では,MCTビスケットの垂直方向への膨張はLCTビスケットほど大きくはなかった。MCTビスケットの焼成品は小さく破断特性値が高かった。垂直方向への膨張は主にグルテンに支えられていると考えられる。したがって,両油脂で形成されたグルテン間には性質に差異があると推察された。LCTビスケット内部には,気泡の周囲にグルテンのような膜状組織が観察された。MCTビスケット内部は空隙の少ない密な構造であった。以上のことから,MCTは生地調製時においてグルテンの性質に影響を及ぼし,そのグルテンは焼成時に伸展し難いものとなることにより,MCTはビスケットをより小さく,より硬くしたと考えられた。
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© 2011 一般社団法人日本調理科学会
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