日本調理科学会誌
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総説
報文
  • 平島 円, 奥野 美咲, 篠谷 晴香, 上村 真子, 高橋 亮, 西成 勝好
    原稿種別: 報文
    2026 年59 巻3 号 p. 173-179
    発行日: 2026/06/05
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル オープンアクセス

     澱粉の調理科学的特性に対する高pHの影響について調べるため,緩衝液を用いてアルカリ性に調整したタピオカ澱粉の諸特性について静的および動的粘弾性測定,DSC測定,顕微鏡観察,還元糖量の測定および色差測定により検討した。pHが10程度までは,3.00 wt%タピオカ澱粉糊液の粘度や粘弾性に大きな変化がなかった。また,糊化温度や糊化エンタルピーにも大きな変化はなかった。しかし,pHが9程度を超えるとアミロース鎖やアミロペクチン鎖の加水分解が起こった。また,pHが12程度を超えると澱粉粒子内の結晶構造と澱粉粒子が破壊された。その影響を受け,澱粉の糊化が起こりやすくなり,溶出した多くのアミロース鎖やアミロペクチン鎖の長さが短くなったことから,pHが12程度を超えるタピオカ澱粉糊液の粘弾性は著しく低下した。

  • 道家 梓, 内藤 宙大, 伊藤 勇貴, 和泉 秀彦
    原稿種別: 報文
    2026 年59 巻3 号 p. 180-189
    発行日: 2026/06/05
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル オープンアクセス

     栄養士養成施設における食物アレルギー教育によるコンピテンシーと学習効果の変化を評価した。2023年4月から9月に栄養士養成施設(単施設)の学生を対象に,食物アレルギーに特化した調理実習を履修した群と履修しなかった群に分けてアンケート調査(4件法)とミニテストを行った。アンケートの項目は,コンピテンシーの測定項目(9項目),モデルコアカリキュラムの到達目標(5項目),調理実習の到達目標(4項目)とした。ミニテストは食物アレルギーの基礎知識を問う8問とした。調理実習期間後,両群においてコンピテンシーの測定項目は,有意な変化がみられなかった。一方で,モデルコアカリキュラム及び調理実習の到達目標,並びにミニテストの点数は有意に上昇した。調理実習の到達目標で「できる」と答えたにもかかわらず,それに対応する内容のミニテストの正解率はいずれも履修群の方が有意に高かった。このことから,非履修群は自己評価が高く,実際の知識の定着には調理実習が必要であると考えられた。

ノート
  • 中川 裕子, 高橋 智子, 大越 ひろ, 守田 和弘
    原稿種別: ノート
    2026 年59 巻3 号 p. 190-196
    発行日: 2026/06/05
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル オープンアクセス

     炊飯前磨砕処理により調製した米素材について,炊飯時の加水量による性状の違いを把握することを目的に,力学的特性(動的粘弾性,テクスチャー特性),および主観的特性により検討した。

     材料には中アミロース米(コシヒカリ)を使用した。調製方法は,米を浸漬後,浸漬水と共にミキサーで磨砕し,加水量(米の2倍~7倍)を調整した後に炊飯した。

     炊飯前磨砕後に調製した米素材は,加水量が多いほど,硬さおよび付着性が低下する傾向で,貯蔵弾性率および損失弾性率は低値を示した。損失正接は,いずれも1以下でゲル的性質を示し,加水量が多いほど粘性要素が高価を示した。官能評価において,加水量が多いほど,噛みごたえが弱く,飲み込みやすいと評価された。これらの成果は摂食機能が低下した方の食事の品質向上,さらには新たな食感を呈する食品開発に寄与できると考える。

  • 米田 千恵
    原稿種別: ノート
    2026 年59 巻3 号 p. 197-204
    発行日: 2026/06/05
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル オープンアクセス

     低温調理条件を含む加熱温度および加熱時間がカツオ肉のテクスチャーとタンパク質溶解性に与える影響を検討した。カツオ普通肉を65℃または85℃で15分または60分加熱し,重量,水分,テクスチャー,タンパク質組成の変化を調べた。85℃加熱肉では重量損失が多く,硬いテクスチャーとなった。タンパク質の分析では,加熱によって水溶性および塩溶性画分が減少し,一方でアルカリ溶性画分は93-95%まで増加した。SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)分析の結果,生試料には解糖系酵素を含む水溶性の筋形質タンパク質や,アクチンやミオシンなどの塩溶性の筋原繊維タンパク質が検出されたが,加熱後は多くの成分がアルカリ溶性画分に移行した。65℃試料では水溶性画分およびドリップ上清中にグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)と同定された35 Kの明瞭なバンドが認められ,GAPDHが他の解糖系酵素より高い熱安定性を有することが示唆された。

資料
  • 中谷 梢, 坂本 薫, 吉村 美紀
    原稿種別: 資料
    2026 年59 巻3 号 p. 205-213
    発行日: 2026/06/05
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル オープンアクセス

     大正期から現在までの明石焼(玉子焼)のレシピと提供方法の変遷と実態を調査した。大正期の向井氏は昆布ダシで小麦粉と乾燥前のじん粉を溶き,全卵を加えて淡口しょうゆで調味し,干したこを用い,板に盛り,だし汁は添えなかった。昭和期の秋定氏は乾燥じん粉を使用し卵量を増加させ,横井氏はゆでだこを用い,昭和24年以降だし汁を添えることが一般化した。現在の店舗ではだし汁やソースの提供,板に盛り,持ち帰りが定着し,薬味や調味料,個数,具材などに差がみられた。明石市では食事や軽食,神戸市では酒肴や締め料理としても利用され,名称は明石市で「明石焼」と「玉子焼」が併用され,神戸市では「明石焼」が多く用いられていた。現在のレシピは昭和期より卵量が増加し,粉・ダシ・卵の比率が多様化した。明石市ではじん粉を用いる傾向がある一方,たこ焼き粉や風味調味料を用いた簡便化もみられた。明石焼は昔ながらのレシピや提供方法を継承しつつ,時代に応じた変化も取り入れており,地域の食文化の一端を把握することができた。

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